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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2011年08月

白仏

白仏とは何か。
生涯を通して人は何を追い求めるのか。
人生の意味を
自ら問い直さずにいられない
フェミナ賞外国文学賞受賞作。


主人公は九州の鉄砲屋江口稔。
彼の戦前戦後を通した生涯の物語だ。
筑後川下流の島に生まれた彼の
少年期、青年期、老年期が綴られる。
そこを貫くのは死、そして原始的なエロス。
日本の小説の伝統作法の流れを汲み
さらに寓話へと昇華させた。

少年期、敵対する村の少女に
小便をかけるシーンは
原初的な性のカオスにあふれる。

近くに住む奔放な年上の少女への憧れと興奮。

上の兄の川での水死。
それが一家にもたらすある種の死の匂い。

シベリアでのロシア兵との一対一の殺し合い。
そこから生まれる殺人への痛み。

鉄砲屋としての成功と衰退。

否応なく物語を覆う戦争と敗戦。

そして、稔の夢に出続けていた
白仏への情熱。

島のすべての墓をあばき
その骨で仏像を作ろうとする
狂気にも似た思いと行動。

そして、物語は冒頭の死の床へと回帰していく。

アジア的エロスと死をないまぜにして
稔の物語は風俗や流行を超えた
本質的な物語になった。

興味をもって読み進められ
心にコツンコツンと当たり続ける
石つぶてはやがて読む者を変えていく。

死は平凡なテーマだ。
言葉を変えれば根源的な題材だ。
人が生きることは究極的に死との対比だ。
死への助走だ。
だから、死はすべての物語の起点であり終着点であり
支点であり力点である。
死は人生のすべてをつかさどる。
死とどう対峙するのか。
それが文学や哲学の本質的なテーマでもある。
というような意味で、死は平凡なテーマだ。
しかし。この物語は非凡だ。
それは“眼球”という言葉に代表される
作者の並々ならぬ物語再生への思いであり
そして、やはり白仏の存在感だ。
墓の骨を集めて仏を作る。
それによってすべての人は一体となる。
その思いはやはり偶像としても
寓話としても、事実としても
人の心を捉えて離さないシンボルとしての
パワーにあふれる。


白仏 (文春文庫)白仏 (文春文庫)
(2000/08)
辻 仁成

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[ 2011/08/30 10:00 ] | TB(0) | CM(0)

ネバーランド

少年は非日常と日常のはざまにいる。

好きな映画だ。

ピーター・パンを生み出した劇作家ジェームス・バリにインスパイアされた物語。
バリとある未亡人家族との出会い、
そして、ピーター・パンという劇作の誕生物語だ。

大人になれないピーター・パン。
子どもたちと遊び興じている劇作家ジェームス・バリ。
そこに色濃く描かれているのは、少年。
日常と非日常の間を行き来しながら、大人をこばむ。運命をこばむ。

しかし、親しくなった未亡人の命はかすかなロウソクの炎のように揺れていた。
現実。日常が否応なく、バリを襲う。

20世紀初頭のファッション。
劇作家をかすかな狂気を交えながら、抑え気味に演じるジョニー・デップ。
薄幸ながら、強い意志をもつ未亡人 ケイト・ウィンスレット。
婦人の子どもの一人であるピーターも心に入り込んでくる。
そこに独特の空気が流れ始める。

そして、クライマックスに描かれるピーター・パンの舞台。
未亡人のために、自宅で演じられるピーター・パンが重なる。
芝居と実際の庭園が一体となって
これは芝居なのか、幻想なのか。現実なのか。その境界が揺らぐ。
唐十郎がかつて描いた、舞台壊しの感動にも似て
静かな切ない涙が流れるのを止めることができない。

何度見ても、日常と非日常のはざまに生きる
ピーター・パン=バリの思いに共感し
そして、永遠の少年への切なさに涙する。


ネバーランド [DVD]ネバーランド [DVD]
(2006/06/23)
ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット 他

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苦役列車

列車の一日の終わりに。
一杯のコップ酒程度の人生。


人生とか、生きるとか。
そんなことを語らない。

毎日ただ一杯のコップ酒のために働く港湾人足生活。
その日々の暮らしが、その中での葛藤が
なぜこんなに興味深いのだろう。

働く。飲む。孤独。
振り返れば、生き物としての私も
似たようなものなのだ。

主人公の北町貫多は、十九歳。
友も、女もなく、日雇いの港湾人足で
日々をつなぐ。
仕事終わりの一杯のコップ酒を楽しみにする。

平成の私小説は
そこからことさらに人生を語ることもなく。
搾取を訴えるのでもなく。
ただ自らの孤独に苛立っていく。
ただそれだけの人生。

港湾仕事で出会った大学生と親しくなるが
しょせんすれ違うだけの間柄。
飲んだ罵詈雑言で関係を失い
また孤独にはまり込んでいく。

日々。酒。苛立ち。人生でもない生活。
明日も立てられず、今日も省みず。
されとて振り返る過去もなく。

ただ一点。生きている。

そこから何かを読み取るも自由。
読み取らぬも自由。

平成の日々は漂いながら
気がつけば、明日へと流れていく。

苦役列車苦役列車
(2011/01/26)
西村 賢太

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[ 2011/08/09 10:15 ] | TB(0) | CM(0)

モンスター

“モンスター”の本質は
あやうい幼子の心。


この映画の主人公はモンスターと呼ばれた連続殺人鬼の女。
しかし、この映画を見ていて、あやうさに涙が出てきた。

物語は、街娼で何とか食べているシャーリーズ・セロン演じる
主人公が、街で一人の少女に出会ったところから
歯車が狂い始めていく。

主人公は天涯孤独。
演じるシャーリーズ・セロンは、美貌も垣間見えない。
出会う少女も決してきれいではない。
世間から見捨てられた二人が出会い
お互いしかいないと感じたときから
物語は暴走を始める。

主人公は、見た目は大人の女性だが
内面は幼子のまま。
孤独で、誰かに愛されたくて、その誰かに誉められたくて
認められたくて、あやうい人生を生きている。

そして。少女のためにお金を稼ごうと
街娼で出会った男性を最初は偶然から。
そして、次からは計画的に殺していく。
それも幼い発想。
お金を得るために、この方法しかない、という短絡。

どこかで、誰かと出会っていて、愛され、愛していれば。
孤独な幼児性は連続殺人に行き着いた。

幼子は、性急であり、短絡的であり、激情的であり
あやうい。そして何より、その魂は孤独だ。
ハイウェイにただ一人たたずむセロンの姿に
圧倒的な孤独を感じた。

ただ一人求められた少女。
そのことが彼女を破滅へと導く。
運命は残酷に彼女を生かし、そして、殺した。


モンスター 通常版 [DVD]モンスター 通常版 [DVD]
(2005/05/28)
シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ 他

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iPhone+iPad×Googleでビジネスを加速する方法

iPadでビジネス系ソフトを使いたいなら。

iPadを手にしたけれど
ビジネスユースにはoffice系ソフトが必要。
どうしよう?
と思っていた方には
ひとつの回答を示す本である。

iPhone
iPad
Google
と最近のキーワードをすべて集めて
(Facebookはないが)
ビジネスユースを追求した本だ。

キモになるのがGoogle Apps(アップス)という
Googleのサービス。
ネットで見ると
Googleのビジネスソリューションとして提案されているが
このサービスのスタンダードバージョンが無料で使え
クラウド環境に仕事データを置くことで
コスト削減とマルチデバイス活用ができるという提案本だ。

Google上で
メール、スケジュール管理はもちろん
ワープロ、表計算、図形描画ソフトも揃っていて
クラウドにデータを置いておけば
iPhone、iPadでもそのデータを使える。
グループ管理はGoogleのお手のものなので
プロジェクトや中小企業での利用を
本書では推奨している。

もちろん、セキュリティの点は
各自自己責任で判断しなければならないけれど。

僕自身は個人なので
そこまでの必要性を感じられず
実行に移していないけれど
ノマドタイプの執筆者なら
出先でのデータ活用に役に立ちそうだ。


iPhone+iPad×Googleでビジネスを加速する方法iPhone+iPad×Googleでビジネスを加速する方法
(2010/06/30)
中嶋 茂夫

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[ 2011/08/01 16:44 ] | TB(0) | CM(0)
プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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