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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2011年10月

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

これは子どもと大人の戦いである。

ヱヴァンゲリヲンでは、突如現れる使徒はヱヴァンゲリヲンの敵であるが、
一貫して意味不明の存在として描かれている。
しかし、その使徒の存在が3.11以降、変わってしまった。
意味不明、空前絶後、天変地異。
まさに大津波であり、それに伴う人災である原発事故。
星としての地球の狂気。
これらはまさに使徒ではないか。
新たな恐怖をもって使徒の存在を見ざるを得ない。

そして、大人が正しいのか。
これも3.11以降突きつけられている課題であるが
まさにヱヴァンゲリヲンはその大人と子供の戦いとして
描かれていると読まざるを得ない。
司令官である父の何やら不可解な大人の思惑。
それを知らずに父に反発を重ねるシンジ。
そして、他の子どもたちも大人との戦いを秘めている。
大人は何をやらかすかわからない。
何を考えているかわからない。
かすかに狂気を秘めている。
エバはそうした存在としての他者=大人と戦う子どもの物語である。

さらにコミュニケーションの断絶に苦しむ子どもが
ここには描かれている。
それはまさに現代的なテーマである。

ヱヴァの現代性は3.11以降
さらに際立ってきている。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.【通常版】 [Blu-ray]ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.【通常版】 [Blu-ray]
(2010/05/26)
林原めぐみ、緒方恵美 他

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忌館 ホラー作家の棲む家

嘘の配合比率が絶妙。

ホラー系の編集を生業とする主人公が住んだ館は
イギリスから移築された幽霊屋敷だった。

この小説は現実から
次第におかしな出来事が起こり
ホラーへと進んでいく。
その嘘の配合比率が絶妙だ。

そもそも、小説とは
リアルに嘘を混ぜたもの。

その配合比率で以下のように分類できる。

リアル>嘘
リアル=嘘
リアル<嘘

例えば。
ある解剖学書で
骸骨の上に蠅が止まっている
細密画があった。
その蠅はもちろん、フィクション。
嘘なのであるが、
このハエがいっそうのリアルさを生んでいる。
少しの嘘はリアルを高める。

さらに嘘の配合比率がリアルと同じくらいになると
読者は今がリアルか、嘘がリアルかわからなくなってくる。

さらに言えば
リアル<嘘
は嘘がリアルを追い越していく。
アンチリアルという新たな地平を拓くものといえる。
フィクションの世界こそが人生。
今いる人生はフィクション、仮想現実。
オタクの立ち位置はここだと思う。
そういった意味でオタクが
アイドルやSF、アニメに傾倒するのは
アンチリアルへの多いなる志向だと言える。

この嘘の配合比率の順番に
一番上がノンフィクションであり
二番目が一般の小説であり
三番目がホラーやSFという考え方もできる。


さて、この小説。
作者の三津田信三は
本物のミステリー系の編集者。
さらに作家が住んだ家の周辺も
実際に存在する。
作中に出てくる作家が応募した小説も
本当に応募されたものだという。

こうしたリアルを重ねて
いつしか登場人物である作家は
迷宮魔界へと足をそっと踏み入れる。

その足の踏み出し方が絶妙で
読み終えた後でも
この屋敷は本当にあるのではないか。
あってほしいと願う自分に気づく。

「にちゃり」という笑いの繰り返し。

イギリスの木の家、その中に置かれた家と瓜二つなドールハウス。

愛読者が次第に変質していく様。

この小説は多彩なホラーとサスペンスの要素をミックスして
読者を夜眠れなくさせてくれる。

忌館 ホラー作家の棲む家 (講談社文庫)忌館 ホラー作家の棲む家 (講談社文庫)
(2008/07/15)
三津田 信三

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[ 2011/10/13 09:31 ] | TB(0) | CM(0)

原稿用紙10枚を書く力

10枚書く力とは
心と頭と身体が三位一体となった
究極の人間力である。


10枚書けてはじめて、文章を書けると著者は認定する。
その力を身につけるためのノウハウ本である。

印象深かったのは次の3点だ。

一つ目は「起承転結の転から発想すること」
これは言いかえれば、驚きであり、感動である。
心に響く文章とは
こうした驚きを核に据えた文章なのである。
ゆめゆめ文頭から書き始めてはならない。
胸に刻もう。

二つ目は「意味の含有率を高めること」
ちょっとわかりにくい表現であるが
頭でイメージしたものを文章に落としていく
と考えたらどうだろうか。
それがビジュアルなら、ずっといいと思う。
絵を思い浮かべて、それを文章でスケッチしていく。
これを胸に刻もう。

三つ目は「文章に身体性を盛り込むこと」
これはその人らしい個性と言ったらいいのだろうか。
著者は立ち位置にこだわっていた。
一人称か、三人称か。
一人称であれば、例えば同じ物事を見ても
人によって感じ方が違うだろう。
例えば社内で化粧する女子高生。
40~50代の女性なら眉をひそめるかもしれない。
同年代の女子高生は、どんなコスメを使っているのかが気になる。
その本人になってみれば、実は彼氏を別れた涙を隠そうとする
化粧なのかもしれない。
立ち位置で物の見え方は大きく変わる。
そこをどう見るかが、個性であり
その人が生きてきた人生が問われるのだ。

さまざまな書く力を高めるノウハウは書かれているが
書く力の奥底には、
心と頭と身体を全身全霊でこめるための
人間力、自らの生き様が
問われていると感じた。

原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)
(2007/02/09)
齋藤 孝

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[ 2011/10/12 10:04 ] | TB(0) | CM(0)

誰かに見られてる

三重に裏切るミステリー。

『ブレードランナー』『ブラックレイン』『エイリアン』の
リドリー・スコット監督作品。
殺人事件を目撃したセレブ女性を警護する下町に住む男性刑事。
二人はいつしか恋に落ちていく。
しかし、殺人犯は証言をさせまいと女性を狙う。

この映画は次々に裏切る。

一つ目はサスペンスを裏切る。
刑事事件の証人を守るにしては
ゆるい警官たち。
女性に簡単に近づく殺人犯。
このことからも、スコット監督は
緊迫感あふれるサスペンスとして
この映画を撮ろうとしていないのは明らかだ。
サスペンスに徹するなら
もっともっと緊迫感を高める方法がある。
では、ラブストーリーか。
実はそれも違う。

二つ目はラブストーリーを裏切る。
守り、守られる関係は
擬似恋愛に落ちやすいのは心理学でもよく語られている。
教師と生徒、医師と患者と似た関係だ。
守られることを愛情と錯覚する。
守ることを愛情と勘違いする。
そこに生まれるのは、ひとときの恋愛感情。
セレブと庶民という対比も
この叶わぬ恋を燃え上がらせる。
しかし、この関係は疑似恋愛であるなら
結末は明らかだ。
二人は最後は離ればなれになる。
女は海外へ。男は妻のもとへ。
クライマックスに向かうにつれて
二人の恋はすれ違って行く。
この映画はラブストーリをも裏切る。

そして。
この守り、守られる関係すらも裏切る。
ラストで殺人犯を撃ったのは
刑事の妻だった。
結局、刑事は守ることすらできずに
守り、守られる関係は
終わりを告げる。

この映画は
三重に裏切りつつ
人と人の悲しさへと落ちていく。
男は妻に戻る。
しかし、本当にもとの関係に戻れるのだろうか。
女は海外へと旅立つ。
しかし、どこへも行っていない、心は。

人生とは
そうした宙ぶらりんな状態で
生き続けることだ。

誰かに見られてる [DVD]誰かに見られてる [DVD]
(2010/09/22)
トム・ベレンジャー、ミミ・ロジャース 他

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電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ

恐ろしいスピードで状況は変わっている。


2011年12月発行の書籍である。
冒頭、シャープの電子書籍リーダーである
「ガラパゴス」の発売開始がクローズアップされている。
さらにソニーの電子書籍リーダーも。
しかし、もう「ガラパゴス」は規模の縮小を余儀なくされている。
その間わずか10カ月。
本当に「ガラパゴス」になってしまった。
また、ソニーはタブレット端末に注力している。
こうした最新の領域を扱う本の情報鮮度の劇的な劣化が、
こんなにも如実に現れることに驚きを覚える。
この本では日本における
電子書籍のフォーマットにおける問題点を
リアルに指摘している。
読んでいて興味深かったのは
著者自ら電子書籍をiPadの日本発売に合わせて発行しようとする
試行錯誤のリアルさである
アップルやアマゾンは独自規格を貫き
だからこそ、その中にいる限り、読者は快適に過ごせる。
しかし、ひとたび違う行動を取ろうとすると、
そこには大きな壁が待ち構えている。
それがAndroid系の自由さとは裏腹なのである。
言ってみれば、ディズニーランドのゴミ一つない自由さと言うべきか。
ともあれ、初読から数カ月で
こんなに状況が変わっていることを認識させてくれた
この本はいろいろな意味で考えさせられる。
この領域は朝令暮改でも遅いかもしれない。

個人的には書籍で本を読む派ではあるが
iPado2を入手以降
あの薄さの中に本が入ってしまう点には
大きな感動を覚えている。
しかし、しかし、新刊書が
電子書籍でなかなか出ない。
読みたい本が書籍でも、電子書籍でも
手に入るようになったら
電子書籍リーダーも興味の対象になるかもしれない。
その日本におけるキーワードは何か。
アマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」の
日本発売だと確信している。

電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ (ビジネスファミ通)電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ (ビジネスファミ通)
(2010/12/20)
西田 宗千佳

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[ 2011/10/07 13:23 ] | TB(0) | CM(0)

スパイ・ゲーム

本当のスパイ映画とはこうだ。

かっこいいとはこういうことだろう。
CIA退職の日。
レッドフォードのかつての部下ブラピが中国で捕まった。
レッドフォードは果たして彼を救い出せるのか。

スパイとは諜報活動を行う者のこと。
情報収集と情報操作で目的を達成する。
この映画はそうしたスパイの本質を描いている。
決して007に代表されるようなドンパチ、アクションものではない。

レッドフォードは年老いたCIA職員。
退職を迎えて、最後の1日という設定がいい。
画面にタイムリーに時間が出て、緊迫感を誘う。
レッドフォード退職のリミットが
ブラピの処刑のリミット。

場面はほとんどラングレーのCIA本部。
その会議室内となる。
レッドフォードはブラピの元上司として
会議への出席を求められ
かつての彼との事件の数々を語っていく。
会議はブラピの独自行動の結果の逮捕に
見捨てる方向へと進んでいく。
裏で動くレッドフォード。
これまで築き上げたネットワークとスキルを駆使して
CIAから電話やFAXを送ることで、
事態を動かしていく。

ここらへんのスピード感とスリル。
果たしてブラピは救出されるのか
といったドキドキが高まっていく。
過去の回想シーン以外に
メインの流れでは
アクションがまったくと言っていいほどないのに
逆に何十倍のアクションを見たように
緊張してくる。
心理戦という言葉が頭をよぎる。

ラスト。
ブラピがなぜ独自行動を取ったのか。
その理由が明らかになっていくあたりから
人間ドラマが際立ってくる。

レッドフォードはブラピのつかまっている現場から
遠く離れたCIAの一室でブラピ救出劇を演出する。

ラストにブラピが「ディナー作戦」という名前を聞いたとき
彼を助けたのがレッドフォードと気づく辺りは感動的だ。

そして。ラスト。
レッドフォードは古いポルシェで去っていく。

アクションを裏で糸引く者。
そんなスパイの本質が描かれ
しかも、レッドフォードならではの
ヒューマンな味わいにあふれた1本だ。

タフでキレてるブラピもいい。


スパイ・ゲーム [DVD]スパイ・ゲーム [DVD]
(2002/07/25)
ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット 他

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プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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