FC2ブログ

本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2012年04月

IP/NN 阿部和重傑作集

「ぼく」という幻想。

この本は『インディヴィジュアル・ブロジェクション』と
『ニッポニアニッポン』という
阿部の代表作を1冊にまとめたものである。

感じたのは人称の問題だ。

それは「ぼく」という幻想のありかを
突き詰めていくことになる。

1作目のは主人公は自分をスパイだと思う映写技師だ。
「ぼく」という一人称で書かれることで、
本当にスパイなのか、
身の回りに危機が迫っているのかどうかが
曖昧なままで物語は進んでいく。

「ぼく」の実は平凡な日常が
Гスパイ行為」というフィルターを通すと、
非日常へ様変わりしていく。

本当の「ぼく」は何なのか?
存在自体が揺らいでいく。
これは今を生きる「ぼくたち」の
不在証明のようにも思えてくる。

もう1作は、トキを逃がそうとする「春生」の物語だ。
トキは学名ニッポニアニッポンであり、
まさに日本を解放するという比喩である。
その物語が3人称で書かれることで、
行動の滑稽さが立ち上がってくる。
これもまた「ぼくたち」のもうひとつの姿に思える。
日本の今という現実に閉じ込められて、
「ぼくたち」は歪んでいないだろうか?

「ぼく」という存在の
幻想を暴く1冊だ。


IP/NN 阿部和重傑作集 (講談社文庫)IP/NN 阿部和重傑作集 (講談社文庫)
(2011/07/15)
阿部 和重

商品詳細を見る
スポンサーサイト
[ 2012/04/28 07:16 ] | TB(0) | CM(0)

ゼロ年代の想像力 5

『新世紀エヴァンゲリオン』を超えていく。

第一章 問題設定 九○年代からゼロ年代へ/「失われた十年」の向こう側

2. 一九九五年の「古い想像力」

「大きな物語」の喪失が
もっとも明らかになってきたのが、
ー九九五年前後であると筆者は言う。

その変化はふたつの事象が象徴する。
「平成不況による成長神話の崩壊」と「地下鉄サリン事件」だ。

がんばっても豊かになれず、
意味も価値も社会が与えてくれない。
そうした社会が立ち現れた。

そして、こうした社会状況を背景として出現したのが、
筆者が立ち向かおうとする「古い想像力」である。

がんばってもダメ! 社会も生きる意味を示してくれない。
それはまさに「大きな物語」の喪失であり、
そこからどう生きるかを、
「古い想像力」は引きこもり/心理主義で乗り越えようとした。
筆者はこの古い想像力とは違う形で
「大きな物語」の喪失を乗り越えようとしている。

筆者が「古い想像力」を代表する作品として挙げるのが
『新世紀エヴァンゲリオン』である。

このTVアニメを一言で言うなら、
コミュニケーション不全の少年が
父性と女性と対峙する物語だ。
その結果、「何かを選択すれば必ず誰かを傷つける」ので
「何も選択しないで引きこもる」という
「~しない」という倫理が立ち現われていると筆者は言う。
引きこもりの正当化がなされていく。

この「引きこもり主義」が解除されていくのが
二〇〇一年だと筆者は言う。


ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)
(2011/09/09)
宇野常寛

商品詳細を見る
[ 2012/04/07 03:31 ] | TB(0) | CM(0)
プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

リンク/画像について

リンク/画像に問題がある場合は
トラバかコメントで書き込みください。
削除いたします。

月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム