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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2012年09月

雨あがる

絶妙の語り口に引き込まれる。

黒澤明の脚本による
遺作ともいうべき映画。
その本の素晴らしさに舌を巻く。

雨の川辺にたたずむ浪人。
宿に戻ったその武士は
妙に腰が低い。
長雨で川止めの庶民と
気さくに話を交わす。

ひょんなことなら
もめ始めた
宿泊者の夜鷹と老人。
浪人は二人を仲裁し
傘を手に出ていく。

浪人はたくさんの食糧とともに
戻ってきた。
そして、人々と始める宴。
踊り歌う人々の中で
夜鷹と老人も心を溶かしていった。

部屋に戻ると
妻が静かに待っていた。
妻に止められていた賭け試合をして、
金子を手にしたのだ。
それを謝る浪人。
最後には笑って許す妻。

この宿での描写が
長いと感じるのは
今のテンポがいい映画に
慣れ過ぎているからか。

しかし、ここをたっぷりと語るのには
大きな意味があることが後にわかる。

黒澤脚本にはそういう意味で
まったく無駄がない。
といって、物語が
やせ細っているわけでもない。
ひとつひとつをていねいに
人間に寄りそいながら描いている。

次の日。
武士のけんかを仲裁したことから
浪人は殿様に城に招かれる。
この殿様がいい。
豪放磊落、きっぷがいい。
構えたところがない。
気さくだ。
殿様というと、
かしこまった印象が強いが
その印象をひっくり返して
どんどん引き込まれていく。

殿様の招きで
剣術の指南代に内定する浪人。

帰って妻に報告する
浪人はほぼ内定だと喜ぶが
妻は何とも言えない顔をする。
この間がいい。
控えめでありながら
しっかりとした女性として
描かれている。

そして、指南代を試す御前試合。
ここで浪人は強さを発揮する。
浪人は柔らかな物腰ながら
腕前を発揮する。
しかし、ここでやらかしてしまう。

さらに帰り道で
待ち伏せしていた町道場の
男たちと切り合うことになる。
すべてを峰打ちでかわすが
道場主は味方同士の相打ちで
首から血を吹いて倒れる。
この地の赤がその後を予感させる。

物語が大きく動いていく。

果たして浪人は指南代になれるのか。
この辺になると
主人公に感情移入して
目が離せなくなる。

ゆっくりと描き始めながら
語り口で、物語の思わぬ展開で
それぞれのキャラクター造形の妙で
観る者をひきつける黒澤脚本。
本当によく練られていると思う。

晴れわたった翌朝。
浪人は宿でじれながら使者を待つ。
この辺の人間味もいい。

そして、重臣が使者として来る。
答えは?
賭け試合をしたことがわかり
指南代の話はご破算と告げられる。

すると、ここまで静かな存在だった
妻が強い口調で語り始める。

「何をしたかより、
何のためにしたかが大切です。
でくの坊のあなたたちには
この人の良さはわかりません」

これまでの抑制された存在であった妻の
静から動への転換は
観る者を快哉させ、
妻の浪人への愛を感じさせられる。
この映画の白眉となる場面だ。

浪人と妻は旅立つ。
川を渡り、山道へと向かう。

その頃。
城内ではその話を聞いて
殿様はなぜ機転を利かせて
浪人を採用しなかったかと
重臣を責める。

そして、自ら馬を駆り
川を走り、山道を駆け
浪人を迎えようとする。

峠に出た浪人と妻は
そこから見える景色の美しさに
感嘆していた。
幸せな瞬間。
物語はここで終わる。

観る者としては
殿様との再会を
心待ちにしていたが
そこを描かないところが
黒澤の黒澤たるゆえんだろう。

士官がダメになった。
しかし、そのことはきれいさっぱり
諦めると、浪人は決めた。

妻は強いけれど、うまく世を渡れない
浪人がいいと愛情を深めた。

その寄り添う幸せの象徴が
峠で観た海の風景だ。

このラストシーンだからこそ、
この物語は
余韻が深く暖かい。

いずれは殿様が追いつき
士官となるハッピーエンドは
それぞれの心の中で
エンドロールとして流れるだろう。

人間味があり、出会う人にやさしい。
しかし、うまくいなかい。
そんな浪人の人間味に共感する。
浪人を暖かく見つめる妻の存在が
心に響く。

一級のエンターテイメントとは
CGを多用したテンポの良い作品とは限らない。
人間を見つめ、人間を描き
観る者を引き込む物語を展開する
そんな脚本があってこそ
映画は真のエンターティメントとなる。

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バイオハザードIV アフターライフ

ミラをヒロインにした
最高のアトラクション。


4では人間ドラマを最小限に切り詰めて
圧倒的な映像と編集力で
映画というステージ上に
最高のアトラクションを作りあげた。

ヒロインのミラは
相変わらず存在感たっぷり。
凛とした魅力にあふれる。
戦うほどに美しさが際立つ。
このヒロインがあるから
バイオハザードは成立していると
つくづく思う。

渋谷のスクランブル交差点から
ドラマチックに始まる
東京ステージの戦いが冒頭のつかみ。
たくさんのアリスが出てくるのが
奇妙だ。
不思議の国のアリスの世界だ。

次のステージは
元収容所からの脱出ゲーム。
この部分がメインだ。
ここで出会った仲間たちが
一人ずつアンデッドにやられていく
構成はまさにゲームそのもの。

ラストステージはアルカディア号で
ボスキャラとの戦い。

シンプルなゲーム構造を
優れたCGとアクション、圧倒的な編集パワーで
飽きさせない超一級のアトラクションに
仕立てている。

ボスキャラを倒したと思ったら
次の影キャラが出てくる
ラスト辺りは
5への予告編といった
趣もある。

映画としてのドラマチックさや
物語性をもっと欲しいと感じるのは
物語が立ちあがる映画に感動する
僕の感慨だ。

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(2011/04/22)
ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター 他

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九月が永遠に続けば

出だし最高!
ジェットコースターミステリー。


ヒロインはシングルマザー。
深夜、息子がゴミ捨てに出たまま失踪する。
彼氏が地下鉄のホームから突き落とされて死ぬ。
周辺の人間が次々と不幸に遭う出だしは
最高にスリリングだ。

この謎はどう解かれていくのか?
別れた元夫の再婚相手と
その娘とのつながりが
見え隠れして……。

はっきり言おう。
ジェットコースターが
最初の落下が
最大のポテンシャルであるように。

このミステリーも
冒頭のエキサイトを昇華して
感動につなげる
ストーリー展開や
エンディングとはならなかった。

読み進めるほどに
次第に興奮のボルテージが
下がっていくのは残念だ。

しかし、導入に
あふれる才気を感じる。
次回作に期待◎。

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(2008/01/29)
沼田 まほかる

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マレーナ

愛とは見続けること。

イタリアの港町。
マレーナという名前の
町一番美しい人妻を
少年は見続ける。

少年とは何か。
力のない、ただ見続ける存在なのだ。

だからこそ、
思いは愛に昇華される。

戦争が物語に影を落とす。
夫を戦争で失ったとされたマレーナは
ナチス将校相手の売春婦へと変貌する。

連合軍の勝利。
マレーナは町の女たちのリンチにあう。

町を去るマレーナ。
しかし、夫は生きていた。
片手となってマレーナと町に戻る。

マレーナをリンチした女たちが
市場でマレーナを
再び受け入れるシーンは秀逸だ。
何ともいえない感情が湧いてくる。

そのすべてを見続けた少年は
最後にマレーナに声をかける。
「いつまでもお元気で」

少年の大人への通過儀礼を
痛さと切なさと
エロチックさで
彩った映画だ。


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ソルト

アンジェリーナ!
君はアクション女優か?


冒頭から逃走シーンに手を汗を握る。

CIAのスパイでありながら
二重スパイの疑いをかけられたアンジー。

君はもはやアクション女優なのか?

次第にロシアの陰謀が明らかになっていく。

ハリウッド映画には二通りある。
面白い映画か、そうでないかだ。

この映画は良くも悪くもアンジーの映画。
敵役にもう少し怖さがあったなら。
脚本にもう少し驚きがあったなら。
アクションにもう少し独創性があったなら。

もう少しと願ってしまうハリウッド映画だ。


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トイ・ストーリー2

大切なのは明日なのか。今なのか。

明日を思い煩う。
未来を悩む。
誰にでもあることだ。
でも、そのために
今日という日が
今という時間が
楽しくなくなっていたら?

トイストーリー2で
ウッディーは
自ら問いかける。
明日が大切?
今日はどうでもいい?
その答えは?

トイストーリーは
アンディという少年の
おもちゃたちが主役だ。
カウボーイ人形のウッディ
宇宙戦士のバズが中心だが
その他のおもちゃたちが
みんないい味を出している。

まさにおもちゃ箱を
ひっくり返したおもしろさで
観る者をあっという間に
引き込んでいく。

2では
玩具大量販店でおもちゃマニアの
アルというオヤジに
ウッディが連れ去られる。
日本のおもちゃ博物館に売るためだ。
コレクションとして
いつまでも飾られ大事にされる未来に
ウッディは一度は惹かれていく。

そのとき、仲間のおもちゃたちが
連れ去られたウッディを
助け出そうと
大冒険活劇を展開する。

たくさんのバズ、
偽物バズの登場。
空港でのアクションと
見どころ満載だ。

ほら、もう一度観たくなってきたでしょ?

そして最後にウッディは
仲間と今を楽しもうと
心から思うのだ。

大切なのは明日なのか。今日なのか。
間違いやすいこの問題に
楽しみながら気づかせてくれる
トイストーリー2だ。


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(2010/06/23)
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さまよう刃

感情がテーマ。
だからこそ感情を描かない。


中学生の娘を犯され殺された父親が、さまよう刃だ。

彼は少年の犯人を追い続ける。

そして映画はひたすら寡黙だ。
彼の感情を語らせない。
激高させない。
ただ雪の中をさ迷わせる。

感情がテーマ。
であるからこそ、
その感情を描かないことで、
痛みを観る者に想像させていく。

そして、ラスト。
東京のど真ん中で
感情が、真意が爆発する。
それが観る者に
痛みに似た感情を
浮かびあがらせる。

東野圭吾は、ミスリードを真骨頂とする作家だ。
読者の感情を操り、思いのままに揺さぶり、
ラストにひっくり返すことで、感動を誘発する。

この映画のラストのどんでん返しは、
そんな東野圭吾のミスリードを見事に描いている。
痛いのは観た者一人ひとりの胸だ。


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(2010/04/21)
寺尾聰、竹野内豊 他

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プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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