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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2012年11月

カイジ2 人生奪回ゲーム

今度はチームでの戦いだ。

〇沼攻略が最大の見どころ

前作のカイジが個人戦なら
今回はチーム戦だ。
藤原竜也を中心に
生瀬勝久、香川照之が3人でタッグを組む。

攻略するのは沼と呼ばれる
モンスターパチンコマシン。

この沼との戦いが
全編を貫いている。
そうした意味では
パチンコ台に座って
ジッとしているだけなのだが
そこを3人の誇張された演技で
迫力を出している。
この沼攻略にのめり込み、、
楽しめるかどうかが
この映画の最大のポイントだ。

〇もっと冷たく、吉高由里子!

この映画唯一のヒロインが
前作のラスト付近に出てきた
吉高由里子だ。
彼女はいつもの笑顔を封印して
冷たい印象の女を演じている。
もっとクールで、もっと冷たくても良かったかな
と思ってしまう。
吉高がこの映画の
キャスティングボードを握っているからだ。
吉高は藤原のチームに加わる。
そこから、誰を信じるか、信じないか
というもうひとつのゲームが始まっていく。

〇もっと凶器を、伊勢谷友介!

沼が置かれている闇カジノの
支配人が伊勢谷友介だ。
彼は独特の凶器感を好演しているが
もっと凶器であってもいいと思う。
この映画は藤原たちと
敵役との演技合戦の様相もある。
そこによりいっそうの緊張感を
求めてしまうのは僕だけだろうか。

カイジは負け組の敗者復活の戦いを描いている。
今回はチームでの攻防となり、
そういった意味では敗者の孤独感や絶望感は
少し薄れている。
逆にこの映画は
仲間や友だちの存在にフォーカスしている。
しかし、所詮は一人ひとり。
裏切りや思惑の違いもありながらだ。
ここをもっとクールに描けば
もっとクールな映画になった。
友情物語は個々の緊張感の上に立つと
いっそうリアルに輝きを放つからだ。


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アイアンマン2

悩まないヒーローはどこへ行く?

〇アイアンマンはバットマンと対極のヒーロー。

アイアンマンはノーテンキなところが良かった。
元兵器メーカーの社長で
突如目覚めて自作のメカ装備で
正義のヒーローに変身。
ナルシストでスタイリスト。
悩まないヒーロー。
バットマンが常に悩み続けるのと対極だ。
ところが今回は死や彼女との関係、友だちとの関係で
悩みどころがたくさん。
でも、アイアンマンと悩む姿は似合わない。
どうも乗り切れない展開だ。

〇残念なストーリー

さらに敵役にミッキー・ロークが登場するのだが
この扱いがちょっとイマイチ。
もっと怖くして、もっと強くして
アイアンマンの最強のライバルにしてくれたら
もっと盛り上がったろうに
そこが中途半端。
死の恐怖
ライバルの出現
彼女とのラブストーリー
友だちである軍人とのあつれき。
こう書くとどれもいいネタに感じられるが
それがうまい具合にかみあっていない。
残念な限りのストーリーだ。
そもそも悩まないナルシストでスタイリストの主人公を
生かす方向でストーリーが展開したらよかったのに。

〇アベンジャーズの予告編?

クライマックスの後
ラスト付近で突然
アベンジャー計画なるものが出てきて
あれっ、これ何?
って感じ。
映画全編がアベンジャーズの予告編?
という印象になってしまった。

アイマンマンよ。
悩まないヒーローはどこへ行く?


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ジェネラル・ルージュの凱旋

病院の冒険活劇。

海堂尊の小説、田口・白鳥シリーズの中でも
アクティブな展開が印象的な
『ジェネラル・ルージュの凱旋』の映画化。

〇正義はヒールの顔。

舞台は救命救急センター。
一刻を争うこの場所で
ジェネラルとして君臨するのが
堺雅人演じるセンター長。
今回の映画は堺がほぼ主役と言っていい。
堺が汚職に手を染めているという告発文が
竹内結子演じる田口医師に送られる。
冒頭から傍若無人でしかも汚職疑惑。
ヒールの存在感たっぷりに
堺が登場する。
その演技は水を得た魚。
観ているこちらまでワクワクしてくる。
こういう癖のある役をやらせると
堺はほんとうに生き生きとしている。
そして、正義が終始ヒールの顔で登場するのがいい。

〇支える女は強い。

救命救急センターの看護師長は羽田美智子。
堺の動の演技に対して、
こちらは徹底して静のたたずまい。
冒頭はちょっと印象が薄い気もするが
次第に頭角を現してくる。
凛として堺をサポートする姿がいい。
支える女は強い。
クールビューティはここに極まる。
ちょっと言い過ぎかな。

〇ボケ味も新鮮。

竹内結子の田口医師と
厚生労働省の役人・白鳥圭輔(阿部 寛)の凸凹コンビは
今回、完全に脇に回っているが、
そんな中でも竹内のボケ味がいい。
原作はさえない男性キャラ。
それが女性になり、
しかも竹内があまり演じていないボケキャラだが、
次第にツボにはまってくる。
竹内は笑顔が本当に魅力的な女優だが
ボケ味も新鮮で可愛らしい。
そして、そのボケの中で
真実を見抜いていく。
最後に堺を追いつめる辺りは
この映画の真骨頂だ。

ラスト間近。
病院に多くの患者が運び込まれ
すべての医師や看護婦が
懸命に働くシーンには
心が動かされた。

ストーリーの高い完成度と相まって、
それぞれの役者の魅力を
味わえる病院活劇に仕上がっている。


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あるスキャンダルの覚え書き

ねえ、お友だちになろうよと
女性は言いました。


いいよ、ともう一人の女性は言いました。
そこから始まる心理ホラー。
怖いというより、切なさを感じた。

ヒロインは新任女性教師。
ケイト・ブランシェット演じる彼女は
荒れている高校で目立つ存在。

彼女に近づくのが
年配の女性教師。
演じるはジュディ・デンチ。

ケイトが男子生徒と
ただならぬ関係になったことを知った
ジュディはそのことをネタに
ケイトに近づく。

そして。
この関係を誰にもしゃべらないと
友だちになろうとする。

ねえ、友だちになろうよ。
そこから始まる物語。

ケイトは結婚していて
子どももいる。
男子生徒からも好かれる。
たくさんのものをもっている存在。

一方、ジュディはオールドミス。
独身。
もっていない存在。

彼女にはケイトしかない。
一方的に好きになり、一方的に傷つき恨む。

ストーカー的な話題だが
怖さよりも、寂しさを、悲しさを感じた。

一人で老いていく女性。
友だち以上の関係を求める彼女。
そのことが孤独を際立たせていく。

これは孤独から逃げ出したい女性の物語であり
もう一方は家族をもち、それに倦んでいる女性の物語でもある。

ラスト付近。
ケイトと男子生徒との関係をジュディが広め
ケイトは追い込まれていく。
これはジュディの取った最後の手段。
果たしてケイトはジュディのもとへ向かうのか。
家族は壊れてしまうのか。

人はみんな誰もが孤独を抱え込んでいる。
それを愛するのか。逃げ出そうとするのか。

人は誰もが今ある人間関係に飽き飽きしている。
それを愛するのか。逃げ出そうとするのか。

孤独は愛と似ているけれど、愛ではない。
愛は牢獄に似ているけれど、その鍵は自身がもっている。


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ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット 他

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森崎書店の日々

神田の古本屋の二階に住む。
夢のようなお話。


学生時代、神田の古本屋街に
住めたらと思ったことがある。
それを実行してしまったお話。
しかも、古本屋の二階。
それだけで夢のような物語だ。

ヒロインは会社の先輩の彼に振られ
会社にもいづらくなって辞めてしまった女性。
おじの誘いで経営する古本屋の二階に住むことになる。
神田が自分の庭。
落ち込んでいた気分が徐々に立ち直っていき……。

古本に囲まれた生活の描写がいい。
古本の魅力もさりげなく織り込まれている。
本好きにはたまらないシーンが続く。

徐々に気持ちを立て直していく辺りが自然でいい。
そして、神田古書店街の周辺の人々がいい。
失恋から始まるストーリーなのに
何だか優しい。心が癒される。

物語の白眉は
おじに気おされて
彼の家に行く部分だ。
おじの姪への愛情が感じられて
優しさがストレートに伝わってくる。

そして。
喫茶店で会う人への
淡い恋心もいい。

またまた神田の古本屋街に
住みたくなってきた。


森崎書店の日々 (小学館文庫)森崎書店の日々 (小学館文庫)
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八木沢 里志

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[ 2012/11/22 09:46 ] | TB(0) | CM(0)

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

ネオ・エヴァ、新たな神話の始まり。

エヴァを観ていると
最近既視感に襲われる。
ずっと何千年も
少年少女は戦っているような気がする。
歴史に中で。書物の中で。映画の中で。

エヴァ・破では
少年少女は
さらに過酷な戦いの中に突き落とされる。
ネオ・エヴァは新たなステージへ。

大人は陰謀の代名詞。
ゲンドウ司令はさらに謎めく。

少年少女は戦うもののシルシ。
次々と使徒が襲い来る。
使徒は死徒であり、使途である。

そして、少年少女は刹那シンクロし
そして、それぞれの孤独へ。

エヴァの物語は
戦う少年少女の神話へと
昇華し始めた。
この物語をどう受け止めるのか。
現代の少年少女よ。
かつての少年少女よ。


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ふがいない僕は空を見た

なぜか泣きたくなってきた。
セックスと命と子どもの物語。


田畑智子のコスプレベッドシーンで
ちょこっとだけ話題になった映画。

そこから始まった物語は
深く、果てしなかった。

アニメのコスプレ好き主婦のあんずと
コスプレセックスをする斎藤君。

貧民窟のような団地に
痴ほう症の祖母と住み
アルバイトに精を出すその友だち。

この男子高校生二人を中心に
いくつものエピソードが散りばめられた映画だ。

すべてのエピソードは
セックスと命と子どもにつながっている。

コスプレ主婦あんずは
子どもができずに
不妊治療をしている。
旦那はマザコン。
義母は子どもができないあんずを責める。

斎藤君のお母さんは助産士。
命が生まれる場で生きている。

友だちと女友だちは
同じ団地に住み
お互いの貧しさを
いたわりあいながら
ときとして苛立ち凶暴な牙をむく。

友だちのアルバイト先の先輩は
子どもに性的ないたずらをして逮捕される。

すべての子どもたちはふがいない。
ふがいないとは
自らの力で経済的に自活し自立できない姿だ。
そして自分が何もできないことに傷つき、悩むありようだ。

斎藤君は
コスプレセックスの動画をネットにさらされ
引きこもる。

その友だちは
金が底を突き、コンビニの店長の財布に手を出し
見つかる。
斎藤君にいら立ちを募らせ、
女友だちとコスプレセックスのビラをまく。

彼らはともにふがいない。
そして、彼らを取り巻く今の社会を生み出した
大人たちもふがいない。

そして、ふがいない日本。

小さなエピソードが
今の日本を露わにする。

斎藤君の友だちが
おにぎりにむしゃぶりつく姿には
涙が出た。

しかし。
あんずも、斎藤君も、その友だちも、その女友だちも。
明日を生きていかなければならない。

「すべての子どもは命なんだよ。
 その命を祈っている」
神社で助産士の母が語ったことばが
今の日本への祈りに聞こえてきた。

これは確かにセックスと命と子どもの物語だ。

観終わって数日。
なぜか泣きたくなってきた。

ふがいない明日を生きよう。
僕たちも。
祈りを込めて。

ふがいない僕は

映画『ふがいない僕は空を見た』公式サイト

コヨーテ・アグリー

人生に間違いなんてない。

シンガーライターをめざして
ニューヨークに出てきた少女が
カウンターで踊るバー「コヨーテ・アグリー」で
働くことになる。
めざしていたものとは違うステージ
そして社会の厳しさを知る。
しかし、そこで成長していく
新しいニューヨーク・ストーリーだ。

少女はひとつのトラウマを抱えていた。
それはシンガーライターをめざしているが
人前で歌うことができないというものだった。
このトラウマをどう克服していくのかが
この映画のひとつのテーマになっていく。

「コヨーテ・アグリー」は
おかしなバーだ。
連日人が押し寄せ
バーテンの女性たちが
カウンターをステージに
腰を振って踊り
はちゃめちゃにはじける姿を
楽しむ。
せっぱつまって
ここで働くことになった少女は
トラブルを回避するために
ジュークボックスに合わせて
歌うことができた。
一歩前進。
ここから少女は
「コヨーテ・アグリー」で
人気を得ていく。
機転を利かせ
カウンターで乗りまくる少女たち。
これははちゃめちゃ青春ものだ。

そして。
この映画はもうひとつ
父親との愛情物語を
用意している。
娘をこよなく愛する父親は
「コヨーテ・アグリー」を訪れ
踊る娘を見て
ショックを受ける。
必死に電話で話す娘。
父親の事故をきっかけに
二人は関係を修復し
新たな関係へと向かう。

そして、ラスト。
少女はシンガーライターショーの
ステージに立つことになる。
少女はステージで歌うことができるのか。
それまでの「コヨーテ・アグリー」での経験や
ボーイフレンドとの出来事や
父親との関係。それらすべての経験が
少女に力を与えようとするシーンだ。


人生に間違いなんかない。
すべての経験は人を成長させていく。
そう感じさせてくれる
ハッピーストーリーに
仕上がっている。


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ナイト&デイ

トム・クルーズがジャッキー・チェン化!

最近のトム・クルーズは
アクションに境地を
見出している。
MIPシリーズもそうだしね。
この映画もジェットコースタータイプの
アクションスパイムービー。

軽さが一番の特徴。
トムは敏腕スパイで
笑って会話しながら敵を倒しちゃうとか
とにかく軽い感じで演じている。

アクション中心で
さらに軽い笑いを織り交ぜながらって
どこかジャッキー・チェンに似ていない?

しかし、トムはいかんせんカッコよすぎる。
軽々と危機を脱出していくシーンシーンでの
コメディ感がもうひとつ。
もっと笑わせて欲しい。
笑いと緊張の緩急がもっと欲しい。

しかし、人はなぜ軽さに惹かれるのだろう?
ムキにならないで軽くこなす。
それがカッコイイと思えるのはなぜだろう。

キャメロンは一般人で
巻き込まれてトムと逃避行になる。
トムの周りには危険がいっぱい。
危険は恋の媚薬。
キャメロンとトムがいい感じになっていくのも
予定通りだよね。
007シリーズを引き合いに出すまでもなく
スパイムービーと恋はセットなんだよね。

この映画ではトムが危険になると
キャメロンを薬で眠らす。
そして場面転換というスタイルが
テンポを加速させているけど
この部分はもっとステレオタイプで
何回も繰り返した方が良かったかな?
印象に残らせるために。
なぜならラストにつながるから。

全体に軽いノリで次々と続く
アクションとラブを楽しむ映画だけど
どこか既視感がぬぐえないのが残念。

やっぱりトムはジャッキーにはなれないかな。


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ヱヴァンゲリヲン新劇場版完全解体全書

エヴァQを観るための参考本。
~謎にはまってしまった人へ~


エヴァには謎がたくさんある。
人類補完計画って何?
碇ゲンドウは何をしようとしているの?
そもそも使徒って何?

それらの謎は謎として
感じておいて
碇シンジを通した
少年の通過儀礼の物語だと
読みたいのが僕の思いだけど。

それらの謎が
どうしても気になるって人のために
完全な解答ではないけれど
これまでにアニメや映画で示された
情報をもとに
さまざまな謎やそれぞれの要素を
検証していった参考本がこれ。

01 謎
02 ディテール
03 キャラクター
04 言葉
05 使徒
06 軍事力
07 世界観

という7章構成になっている。

エヴァの物語を追体験したい人には向かないけど、
いろいろ気になる人にはいいかもしれない。

何となく感じていたけど
キリスト教からの
モチーフの多用は
意図を感じる。

エヴァンゲリオンが
福音という意味のギリシャ語
euangelion
からとられていることは
驚きだった。
現代の福音書というわけか。

この本がある意味凄いのは
01 謎
の最初の項目が
ベタニアベースの役割
から入っていること。
新たな状況の始まりから
エヴァ世界の成り立ちを
追求していっている。

美は細部に宿る。
この情報を積み上げて
エヴァという世界を
再構築しようという
本に感じた。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版完全解体全書 (青春文庫)ヱヴァンゲリヲン新劇場版完全解体全書 (青春文庫)
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特務機関調査プロジェクトチーム

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[ 2012/11/15 09:23 ] | TB(0) | CM(0)

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

誰が何と言っても
“今”という時代の
若者の通過儀礼の物語である。


かつて今の青年が少年だった頃。
エヴァは社会現象になり
オタク文化のシンボルとなり
あまたの模倣や追随を促した。
ヒロインに少女を配した
今のアニメのほとんどが
その影響下にあると言ってもいいと思う。
あるいはその系譜を引いているということか。

そして。
新劇場版。

エヴァ解説本は
その謎に迫る論調がほとんどであるが
ここでは物語としての変貌とその行方を追いたい。

エヴァ以降。
未曽有と大不況と社会構造の変化を受け
エヴァを観た少年たちが社会に巣立っていき
その後継世代はさらに内向き志向を強めてきた。

だからこそ。
うつむきがちな主人公碇シンジは
再登場し、その内面を少しずつ変えていく。

内面に引きこもることが
エヴァのメッセージではない。

その困難な状況をかすかずつでも打ち破り
内面から飛翔し、他者とのコミュニケーション回路を開き
夢の世界から現実の世界へと自分を向けていく。
そのためのもがきやあがきが
新劇場版から読み取りたい
“今”の若者たちとかつて若者だった大人への
メッセージなのである。

非情な壁となって立ちふさがる父親の存在を
以下に超越していくか。
そういった意味では連綿と続く
父親殺しの物語でもある。

父親の背後には
社会の陰謀が見え隠れし
碇シンジの成長が
新しい世界の起爆剤となることが
随所に暗示されているが
それはそうだろう。

社会は若者の成長でしか
新たな発展を用意できない。
かつての若者であった大人たちは
しかし、たやすく今の若者に
席を譲るつもりもない。
そこに葛藤と闘争は起きる。
戦いの中でしか
時代は覚醒していかない。

サードインパクトと呼ばれる
地球破壊のリスタートから15年。
未来を担う少年少女は14歳。
戦争を知らない子どもたちだ。

かつてフォーク時代。
戦争を知らない子どもたちと唄った
若者世代は平和の素晴らしさを謳歌したが
実は戦争は終わってなどいなかった。

地域での戦争にあふれる現代。
サードインパクトを知らない14歳の若者たちに
人類の未来を託すというシナリオは
まさに今という時代のリフレクションなのだ。

かつて14歳が犯した犯罪が問題になった時代に
エヴァは生まれたが
今エヴァは新たな希望として14歳に託す。
この国を、明日を、地球を。

変われよ! 若者!
のメッセージが聞こえたのが
僕だけだろうか。

そして、かつての14歳たちも変わろう!


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三石琴乃、林原めぐみ 他

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ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち

本を読み返したくなるミステリー。

これは本の物語だ。

一冊の本が
人生と深く関わってくることを
思い出させてくれるミステリーだ。

本で本の話を読む。
本好きならドキドキしてくる。
ていねいに紡がれた物語は
一冊の本に分け入りひも解く。
その本を読み返したくなる。
絶妙のブックレビューと言えるかもしれない。
題材となった本を
事細かに紹介しているわけではないのだが。

舞台は北鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」。
ヒロインは人見知りなのに
本のことになると雄弁になる篠川栞子。
助手となるのがその本屋で働くことになった
本が読めない男・五浦大輔。

一冊の本を題材に
謎を栞子が解いてゆく。
栞子は怪我で病院に入院中。
五浦の語る情報と本だけで謎解きをする。

これは正統なアームチェア・ディテクティブだ。
安楽椅子探偵というより入院探偵だが。

そして栞子と五浦の関係は
ホームズとワトスンの関係に
なぞらえることができる。
ここにも正統ミステリーの系譜がある。

五浦は栞子に好意を抱いている。
ほのかな恋愛物語も予感されてくる。

人見知りなのに、本のこととなると
俄然雄弁になる栞子のキャラクターもいい。
多分男性が好きになるタイプのヒロインだろう。

物語はそれぞれが独立した事件の形を取りながら
4本目の太宰治『晩年』でそれまでの物語がつながっていく。
これには少し鳥肌が立った。
そしてどんでん返し。
恋の行方も占いながら
大団円を迎えたこの事件手帖は
思わず2冊目を買いたくなる余韻にあふれている。

それから。
僕は『晩年』を読み返したくなり
買ってしまった。


ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
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三上 延

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[ 2012/11/13 09:29 ] | TB(0) | CM(0)

ゴーン・ベイビー・ゴーン

新しいハードボイルドが生まれた。

ハードボイルドの本質は
主人公が自らの信念を貫くこと。

結果がどんなにきついことになろうと貫き通す。
この映画の主人公は
若くて新しいハードボイルド像だ。

アメリカ・ボストン。
主人公は探偵パトリック
ヒロインは恋人兼パートナーのアンジー。
二人は子どもの失踪事件の捜査を依頼される。
警察と協力しながら二人は失踪を追う。

この映画がまず素晴らしいのは
二人が事件に関連した人の死に
しっかりと苦しむところだ。
死をものともしないスーパーヒーローではなく
悩み、傷つきながらも
自分の信念を貫き通していく。
そんな若き主人公に共感していく。

この物語はいのちの物語だと言える。
子どものいのち、大人のいのち。
失われたいのちの重さを
登場人物たちは必死で受け止めていく。

後半露わになっていくのが
正しさとは何かという問題だ。
ネタばれになるので書けないが
二転三転事件の真相が明らかになっていく中で
この正義についていくつかの考え方が
提示されていく。

最後パトリックは自らの信念に従って決断をする。
恋人のアンジーを失うことになっても。

そうした意味で
この映画は登場人物たちの
喪失の物語とも言える。
失うことなくして、信念は貫けないのか。

正しさとは何か。
映画を観終わった後
私たち自身にも問いかけられてくる。

サスペンスとして
ハードボイルドとして
社会派ドラマとして
心に迫る佳作だ。


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通天閣

これは奇跡の物語。

100円ショップの商品を作る工場で働く男。
場末のスナックでアルバイトする女。
きらきら輝いていない2人の物語。
しかし、これは確かに奇跡の物語だ。

毎日。
僕たちの日常だってこんな感じだろう。
とりたてて素晴らしいこともなく
小さなことで心を振り回される。
男と女の二人の毎日が交互に描かれる。
しかし、二人の息づかいまで
確かに聞こえるような筆致だ。
毎日。
繰り返し。
気持ち。
その中で小さなエピソードが
積み重ねられていく。

二人の主人公は
まったく関係がないように思える。
その二人のストーリーに共通するのは
止まった時。
男の部屋にある電池を抜いた
多くの時計がその象徴だ。
男はかつて一緒に暮らした女とその連れ子と別れ
一人だけでいる。
毎日100円ショップの商品である
「ライト兄弟」という懐中電灯を作り続ける。

一方女は同棲していた男がニューヨークで
映像作家になると出て行った。
そして、自分がこんなところで働いていると
男への当てつけのようにスナックで働く。

二人に共通するのは止まった時。
それでも生きている。それでも生きていく。
僕たちも同じように。

そして、ラスト近く。
タイトルにもなっている通天閣で
事件は起きる。
男はあるアクションを起こし
女はそれを見る。
二人のつながりも明らかになってくる。
そして、二人は刹那すれ違う。
それとも知らずに。
これはやはり奇跡だ。
思えば、今こうやって生きていることも
いくばくかの人と袖をふれあって生きていることも。
そして、縁ある二人が束の間同じ場所に居合わせたことも。

作者は感動的な出会いは用意しない。
二人は同じ場にいたことも知らずに
それぞれの日常に戻っていく。
しかし、わずかの変化の予兆が生まれる。
かすかな、ささやかな変化。
しかし、それは止まった時計を動かそうとする
変化に感じられる。

作者が生まれ育った大阪という土地に
この物語が置かれたこともまた奇跡だ。
東京では通俗に流れ過ぎてしまったであろう
今という時代のかすかな物語の手ざわりがそこにある。


通天閣 (ちくま文庫)通天閣 (ちくま文庫)
(2009/12/09)
西 加奈子

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009RE:CYBORG

サイボーグの孤独。

正義。平和。地球。宇宙。そして、神。

9人ぼっち。

サイボーグたちは911以降の地平で
孤独な戦いを繰り広げていた。

石ノ森章太郎のマンガを
攻殻機動隊の神山健治監督が映画化。
サイボーグたちの最後の戦いが描かれた。


●「彼の声」が指し示すもの。

「彼の声」に従って
高層ビル破壊連続テロが
全世界で起こっていた。
記憶を消された島村ジョーも
彼の声に従って六本木ヒルズを爆破しようと企てる。

彼とは誰か?
その声が指し示すものは?
映画には彼の姿は最後まで出てこない。
彼は神であろうことは想像がついてくる。
そして、神は人間の脳が生み出したものであるという
推論が展開される。
神は死んだ。
そんな言葉が頭をよぎる。
かつて。
サイボーグたちは巨悪と戦っていた。
戦うべき壁があり、大きな物語があった。
しかし、911以降の地平で
サイボーグたちは人類の頭がが生み出した力と
孤独な戦いを繰り広げていく。
ラスト近く。
ジェットとジョーが
宇宙空間でミサイルを爆破しようとする
有名なエピローグが描かれる。
この意味すらもまた変わっていく。
守るべきものはある。
しかし、戦うべきものも自らのうちにある。
このジレンマの中で
しかし、ジェットとジョーは
守るべきもののためにミサイルを破壊しようとする。


●なぜフランソワーズは美しくエロチックなのか?

この映画のサイボーグたちはみな一様に
大人びている。リアルだ。
なかでもフランソワーズが美しく
エロチックに感じるのは
男である僕だからか。
冒頭で飛行機から落ちるフランソワーズは
ゾクッとするほど魅力的だ。
そして、下着姿になり
ジョーとの抱擁する姿は
かつてのフランソワーズではない。
なぜ彼女はエロスをまとったのか。
エヴァのサービ!スサービス!ってこと。
いや、愛するジョーの孤独を癒すために
フランソワーズはより美しくなったのではないか。
その美とエロスこそが
サイボーグたちの生まれ変わりを象徴する。


●3Dは孤独の加速装置だ。

この映画は3D映像で作られている。
サイボーグたちは背景から浮き上がり
美しく躍動する。
そして、この3Dは孤独の加速装置だ。
誰もいない宇宙空間でのシーンで
それは際立つ。
009たちは孤独だ。
正義をなす者は孤独だ。
信念をもつ者は孤独だ。
戦う者は孤独だ。
戦うべき巨悪を失った者は孤独だ。
物語は孤独だ。
そして、その孤独に私たちも生きている。
3Dは私たちの孤独の加速装置でもある。

今、911を超えて。
311を超えて。
大きな物語の喪失を超えて。
神のなき時代を超えて。
私たちは生きなければならない。
孤独こそがサイボーグの
そして、私たちのアイデンティティなのだ。

009 RE:CYBORG
009 RE:CYBORG 通常版 [Blu-ray]
プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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