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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2012年12月

アバター

さまざまな隠喩が交錯する
SFストーリー。


〇先住民と侵略者の葛藤。

アバター。
本格的3D映画の先駆として知られるこの映画は
さまざまな隠喩やシンボルが交錯する
現代への鎮魂歌だ。

人類と星に暮らす異星人の関係は
人類史上さまざまな地域で行われてきた
先住民と侵略者のカリカチュアであることは
誰もが感じる。
人類はこれまで文明化の旗印を掲げて
あらゆる地域で先住民を侵略してきた
歴史を重ねてきた。
北アメリカ、オーストラリア、中国、北海道など
その侵略の歴史は人類の歴史と呼応する。
こうした侵略の隠喩として
アバターの物語の基本構造は成り立つ。
人類が一見未開に見える異星人を侵略する。
そこにさまざまなギミックや隠喩が重なり
アバターは現代社会への鎮魂歌を奏で出す。


〇アバター、ナヴィ、3D自然主義。

主人公はアバターという
疑似的な体を
遠隔操作して
異星人と交流する。

このアバターは分身であり
もう一人の自分であり
仮の姿であり
真実の自分かもしれない。
パラレルワールドも想起させる。
意味深いシンボルだ。

さらに異星はパンドラと呼ばれる。
パンドラの箱を明らかに表わす。
しかも新たなパンドラの箱だ。

さらに異星人部族名はナヴィ。
彼らは人類をどこに導くのか。
新たなナビゲーションを感じる。

そして3D。
この異星空間は
3Dという虚構で描かれる。
あるかなしかの未来。
あるかなしかの黙示録。
3Dであることの本質的な意味は
仮想と現実を行き交うこの物語を
多重構造で虚構化することだ。

さらにナヴィの暮らす文明は
自然主義である。
自然との共生や調和が重んじられる。
これが3Dで描かれるとき
私たちはそれを未来への指針と見るのか
過去への後悔と感じるのか。

多層的に隠喩とシンボルが交錯する
アバターは私たちに新たな映像の抒情で
訴えかけてくる。


〇圧倒的な戦いのストーリー。

物語は後半
アバター+ナヴィ対人類の
壮大な圧倒的な戦いへと突入していく。

人類の歴史は戦いの歴史。
そんなさらに大きな隠喩とシンボルが
エンターティメントを通じて心に訴えてくる。

戦いの果てに得たものは。
そして、人類はどこへ行くのか。

アバター第二章で
キャメロン監督は
どんな鎮魂歌を謳うのだろう。

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007/慰めの報酬

死体が多すぎる。

〇殺人は復讐の遊戯。

ダニエル・クレイグ主演の新生ボンドシリーズ第二作。
前作ではうまく殺せないという印象のボンドが
次々と殺し続ける。
死体が多すぎる第二作。
死体に限らず、この映画は過剰だ。
アクションシーンもてんこ盛り。
冒頭のカーチェイスから始まり
格闘、追跡
ボートでの海上戦
果ては旅客機での空中戦
とできうる限りのアクションを盛り込む。
しかも展開も早く何が何だか……。
その中で際立ってくるのが
ボンドが相手を殺し過ぎること。
この過剰さはボンドの気持ちの表現か。


〇殺し過ぎるボンドの裏側。

ボンドは黒幕を追っているのだが
一方で殺し過ぎる。
次第にそれは復讐に見えてくる。
前作で最愛の女性ヴェスパーが死んだ。
その復讐を果たしているようにも見える。
あるいは心のバランスを崩したか。
アクションを重ねながら
殺人を重ねながら
ボンドの心の襞が少しずつ見えてくる。
そして。


〇さよなら、ヴェスパー。

砂漠でのアクションで
黒幕の一端にたどり着いたかに見えたボンド。
しかし、それは巨悪との戦いの始まりのゴング。
ボンドは最愛の女性ヴェスパーを
死に至らしめた相手に辿り着く。
ここまで殺してきたボンドはこの相手も殺すのか。
ラスト。
雪の上に捨てられた
ヴェスパーの思い出のアクセサリーが
新たなボンドの旅立ちを象徴している。

何度も見るほどに
さまざまな伏線が見えてくる
一作だ。

ボンドはどこへ行くのか?


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007 カジノ・ロワイヤル

原点回帰の若きボンドシリーズ。
ダニエル・クレイグはけっこういい。


〇スパイは危険な遊戯。

ゴージャスから
スピードとマッチョへ。
新しいジェームス・ボンドがいい。

スリリングなアクションが
息つく間もなく続く。

派手な道具立ては抑え
鍛え抜かれた体を張って
走り続ける。
相手を追い続ける。
戦い続ける。
そのスピード感がいい。

スパイは危険な遊戯。
こんな言葉が浮かんでくる。


〇自尊心こそが個性。

原作はボンドシリーズの最初の1作。
若きボンドがここからスタートする。
若さゆえの荒削りさや苦悩が見え隠れする。
新たな物語が始動する予感がする。

若いボンドは、だからこそ自尊心が高い。
これがボンドの個性になっている。

プライド。
ダンディズム。
英国らしさが
全面的に押し出されている。


〇無駄のない展開。

物語は冒頭からノンストップ・アクションが続く。
休む間もなく、次々と展開する。
この無駄のない、そぎ落とされた展開が新鮮だ。

走り続け、追い続け、ハバマに飛び
空港での旅客機爆破を阻止する戦いに続き、
息つく間もなくカジノ・ロワイヤルで高額の賭け勝負に向かう。

そこで出会ったの女性が、ヴェスパー。
彼女がボンドの最愛の女性となるが、しかし。

自尊心と苦悩のボンドが次第に姿を表わす。

物語は自作へ続く。
ボンドシリーズ初の2部作だ。

新しいダニエル・グレイグのボンドは
007を現代のボンドとして蘇らせそうだ。


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オーストラリア

虚実がないまぜになった
オーストラリア賛歌のラブストーリー。


〇じゃじゃ馬ならし もしくは 美女と野獣。

ヒロインはイギリス貴族の妻であるニコール・キッドマン。
ヒーローはオーストラリアのカウボーイであるヒュー・ジャクソン。
これはオーストラリアの大地を舞台にしたラブストーリーである。

貴族の妻のニコールは高飛車な感じで
イギリスからオーストラリアの牧場へやってくる。
迎えに出たのは牛追いのカウボーイ、
いかにも野獣という感じの
ワイルドなヒュー・ジャックマン。

夫が亡くなり、牧場の経営を
行わなければいけなくなったニコールは
牧場存続のために
牛を港まで運ぶことになる。
それを助けるのがヒュー。

じゃじゃ馬ならし
もしくは典型的な美女と野獣で
二人は恋に落ちていく。

オーストラリアの大地の映像が素晴らしく
二人の恋を美しく彩る。
ニコールがかなり高慢ちきな感じで入るのがいい。
予定調和であるがクラシカルなラブストーリーを楽しめる。


〇史実と違うと思われる日本軍の登場。

ところが。
後半になると物語は戦時中に突入する。
そこで敵役となるのが
真珠湾攻撃の後に
オーストラリアのダーウィンという港町などを
ゼロ戦で奇襲した日本軍。

恥ずかしながら、日本がオーストラリア本土を
攻撃していたということを知らなかった、
ネットで確認すると、ダーウィンを
かなりの回数爆撃したらしい。

戦時中のドラマへと物語は大きく様相を変える。
日本軍が敵役で居心地が悪い感じ。
しかも、史実とフィクションがないまざになっている。

ダーウィンに苛烈な攻撃をしたことは日本人として
知っておかないといけないが
島に上陸して、虐殺的な動きはしてないと思われる。
ここはフィクションだ。
日本人としてオーストラリアとの歴史を
きちんと知っておく必要を感じた。

この日本軍の奇襲するダーウィンに
ニコールがいて、ヒューと巡り合うラストなのだが
日本軍の扱いに違和感を感じて、
ちょっと素直に観れなかった。


〇アボリジニとの歴史はもう一つの物語。

この映画では
先住民であるアボリジニたちが
牧場で働いており
オーストラリア人により抑圧されるシーンが描かれる。

新しい牧場主のニコールは人道的で
母を亡くしたアボリジニの子どもに愛情を深め
この子どもとの関係がラストの物語となっていくのだが
歴史映画ではないとは言え
このアボリジニとの関係の描き方は
ちょっと表面的だと感じた。

映画のラストにオーストラリア政府が
アボリジニへの対応を詫びたという一文が出るのだが、
前提となったアボリジニと白人との関係は
描ききれていないように感じる。
だから、人道主義という
上から目線を感じてしまう。

オーストラリアの近代史を背景としながら
美女と野獣のラブストーリーを展開したこの映画。
もう少し歴史的視点が真摯だったら
そう思わずにはいられなかった。


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私は、フジコ

新たなミステリーの始まり。

〇薄い文庫本は何を意味するのか。

『殺人鬼フジコの衝動』 限定版の
付録のようについてきた薄い文庫本
『私は、フジコ』。

『殺人鬼フジコの衝動』を読み終えた
衝動もそのままに読み進めた。

突然始まった再現ドラマの女優のお話し。
何だこれと読み進むと、この女優が
殺人鬼フジコの再現ドラマでフジコを演じるという。
次第につながってくる
『私は、フジコ』と『殺人鬼フジコの衝動』。
この薄い本は何を意味するのか。


〇 再現ドラマ女優ルミの異変。

物語は再現ドラマ女優ルミをヒロインに展開する。
あるスナックでの再現ドラマ撮影。
そこに居残り、飲み始めたルミと男優の東条。
そして、主役のフジコを射止めたルミ。
ところがそのドラマはお蔵入りとなる。
またスナックに向かうルミ。
実はこの前初めて会った東条と
男女の関係をもったのだ。
そして。
物語が動き始める予感。


〇ラストは大いなる予告。

ラスト。
スナックのママがチラシを見せる。
そこにはQ教団の文字が。
このまま物語は終わる。
自作への大いなる予告。
続きは次回作
『インタビュー・イン・セル』で
明らかになるのか。

新たなミステリーが予告されたまま終わる。


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M:i:III

エアーアクションムービーへと
進み始めたM:i。


〇どこを切ってもトムの映画。

シリーズを重ねるごとに
トム・クルーズの映画になっていく。
トム演じるイーサン・ハントは
カッコよく、新しいヒーロー像を
創造しようとしている。

もともとスパイ大作戦は
何人ものキャラクターがタッグを組む
集団スパイものだが
トムが演じることで
もうトムにしか目がいかない。

どこを切ってもトムがカッコいい映画だ。


〇飛翔感に心躍る。

これでもか、これでもかと
空中でのアクションシーンが出てくる。
エアーアクションムービーが
真骨頂とばかりに
トムが体を張る。
飛翔感がこの映画の特徴になっている。

舞台はバチカンから上海へと
世界を股にかけて
スケール感もたっぷりだ。
何も考えずに楽しむ映画だ。


〇上海のトムが印象的。

ラストのシークエンスである
上海の街をトムが走るシーンは印象的だ。
東洋人の中を走るトムは
異邦人の印象。
予期しないエキゾチックな映像となっている。

物語は部下の女性の救出から始まり
悪玉を捕捉したのはいいけれど
救出され
逆に結婚した彼女が拉致される
という目まぐるしい展開を
派手なアクションでつなぐ。
そしてある兵器を強奪したのち
上海での救出という
クライマックスへと続く。

アクションを楽しむ。
トムを楽しむ。
スパイのびっくりするような
テクノロジーを楽しむ映画だ。


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殺人鬼フジコの衝動

殺人女の話なのに
読むのを止められない。


〇何なんだ、この疾走感。

以前から気になっていたこの本。
軽い気持ちで読み始めたら
止まらなくなった。
久々の経験。
お話は少なくとも15人の男女を殺した
殺人鬼フジコの生涯を
幼少期からたどっていく。
一人称と三人称が交錯しながら
フジコの内面に踏み込んでいく。

冒頭、小学5年生のフジコが
過酷にいじめられる話から始まる。
周囲の人間がめまぐるしく登場し
フジコは一家惨殺の生き残りとなる。
そして叔母の家に引き取られていく。
そこで新たなグループへの所属と
いじめがまた起こる。
そして…

一転中学校の卒業式。
卒業生代表で答辞を読むフジコ。
優等生になっていたフジコ。

さらに結婚。
新たな仕事へ。

めまぐるしくフジコの環境は変わっていく。
そしてフジコの内面も変化する。
その展開の速さに読むのが止められない。


〇どこか共感する自分。

フジコの境遇は
裕福でないし
いじめにもあう。
そんな中で生きていこうと
変貌していくフジコ。
どこか共感する自分がいる。

小学生からの追体験を経て
僕はフジコと同化していく部分がある。
これは読む者の心まで殺すミステリー。

過酷な人生をしたたかに生きる。
そして、心が動くと文章も揺れていく。
心の揺れがピークになると
文章は途絶える。
このリズムにやられていく。


〇背筋がゾクゾクするラスト。

このミステリーが優れているのは
本文でフジコの生涯を描きながら
はしがきとあとがき、最後に添えられた小さな記事で
さらに多層構造の仕掛けを行っているとことろだ。

この小説は別の女性が書いたものを
ある小説家が上梓したとされている。
そして、あとがきでその小説家と女性の
関係が明らかにされる。
さらに記事へと続く。

このわずかな文章が新たなミステリーとなる。
その真意に触れたとき
背筋がゾクゾクするのを止められない。

嫌な感じがありながら
読み続けてしまう
恐ろしい本だ。


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交渉人

一気に引き込まれる。
知性で戦うポリスストーリー。


〇交渉人が籠城、その設定にワクワク!

冒頭、サミュエル・L.ジャクソン演じる
シカゴ警察No.1の人質交渉人、ローマンが
その凄腕を見せつける。

一転、サミュエルが
相棒の警察官殺しの罪で
逮捕されそうになる。
そして、人質を取り
連邦警察ビルに籠城。
ここから立てこもりの緊張感と
無実の罪をどう証明していくのか
その両方にドキドキする。

交渉人が籠城って
この設定がスゴイ。
ここにもう一人の聴き腕交渉人が登場。
サミュエルが交渉人に指名した、
同じくNo.1交渉人のセイビアン。
演じるはケビン・スペイシー。
この二人の駆け引きに引き込まれる。

ポリスストーリーながら
アクション主体ではなく
頭脳線というところがいい。
サミュエルVSケビン。
しかし、その陰で突入部隊が動き出す。
サミュエルは絶体絶命に見える。
どうなるのか!


〇一人で立ち向かう、その姿に興奮!

サミュエルは人質を取りながら
一人で多数の警察官と戦うことになる。
そのことが危機感をあおり
見る者を興奮に連れていく。
どんなことがあっても死なない
スーパーヒーローではないから
ドキドキは加速する。
しかも八方塞がりに見える。
助かっても無実は証明されない気がしてくる。


〇知力で戦う、協力し合う2人にワクワク!

サミュエルとケビン。
犯人と交渉人として対立しあう二人だが
次第にその距離は縮まっていく。
サミュエルが立証しようとする真犯人の影がちらつく。
ラスト付近、お互いを信じ、協力し合う二人の姿にワクワク。
けれど、多勢に無勢。敵は全警察官。
果たしてサミュエルは助かるのか、
人質は救出されるのか。
そして、何より、サミュエルは無実なのか。
そのすべてが一気に解決へと向かう
怒涛のラストは見ごたえがあった。

アクションシーンが続きながら
そこに頭脳戦の駆け引きがある。
この映画は新しいスタイルの
ポリスストリーを生み出した。


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ダイナー

ウェイトレスをする。
それだけで大いなる冒険だ。


〇このハードボイルドは
 現代日本の本質を暴きだす!

現代の私たちは
資本主義というメスに
細部まで切り刻まれている。

全霊をかけて行う崇高な行為であったはずの「労働」は
単なるお金稼ぎと、自らの順位競争に落ちた。
非正規雇用やアルバイト、失業者たちは
人間的価値までも切り刻まれ、部品と化している。

五体は、体と心に分け隔てられ
きしみを生じている。

いのちはそこにあり、ここにある。
あふれかえっている。
しかし、人間は分類され、振り分けられ
商品化され、その輝きを押さえつけられている。

そんな現代。
このエンターティエントは
死ぎりぎりの極限状況に
主人公を置くことで
全人格的な人間の復活を
逆説的に描いている。

まさに資本主義社会が
高度に行き着いた
どん詰まりの日本だからこそ
生まれた骨太のハードボイルドだ。

ヒロインはカナコ。
彼女はヤバい仕事に巻き込まれ
その結果、殺し屋だけが集う
食堂のウェイトレスにされる。
気に入られても殺される。
気に入られなくても殺される。
極限状況の店だ。

カナコはこの店で
次第に輝きを見せ始める。
文字通り、命を賭けた仕事。
それはもう金稼ぎや順位競争などではなく
頭脳と身体と心が一体となった
今日を生きるための全人格的な働きなのだ。

どこにでもいる平凡なカナコが
次第に変わっていく。
輝きを見せてくる。
読んでいるこちらも
どんどん愛おしくなってくる。

そして最後には
カナコが生き延びることを
心から望んでいる。

それが第一の読みどころだ。


〇設定だけで
 既にあまたの小説を凌駕している!

殺し屋だけが集うダイナー。
この設定だけで
あまたの小説を凌駕している。
この設定に導かれるように
描かれる言葉が太い。
料理の描写がよだれを誘う。
その次の瞬間に身体を刻まれる
リアルな死の恐怖が襲いかかる。

全人生をかけて料理を作り、酒を振る舞う。
それを命をかけて食べる。
ときには己の心のままに戦う。
狭いダイナーという空間だけで
この物語世界は神話の輝きを魅せる。

それが第二の読みどころだ。


〇ボンベロの背中を愛せ!

この物語は
ヒロインのカナコ以外に
たくさんの魅力的な
キャラクターが登場する。

なかでももう一人の主人公である
ダイナーのシェフ・ボンベロの存在は
他を押しのけて圧倒的だ。
でかい背中。
元殺し屋。
そして、超一級の腕をもつシェフ。
血の臭いがするシェフ。
何とも危険ではないか。
その手から繰り出される
旨いバーガーには
舌舐めずりが尽きない。
圧倒的な暴力と強さに
ぐうの音も出ない。
そんなボンベロが
次第に追い詰められていく。
ますます男が輝く。

それが第三の読みどころだ。


日本はいびつになっている。
歪んでいる。壊れかけている。
そんな社会で生きざるを得ない我々は
このダイナー主人公たち
そのものなのだということを、
危機的状況に立ち向かう全人格的人間が
今こそ必要なのだということを
この物語はエンターティメントを超えて
突きつけてきた。


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インソムニア

アラスカの白夜。
2つの死の物語。


クリストファー・ノーラン監督は
幻想の作家だ。
といっても、幻想的な映像を
多用するわけではない。
あるフィルターをかけることで
人間心理を映像として表現していく。

この映画では白夜がフィルターとなる。
白夜で眠れない刑事が
次第に幻想と現実の狭間を
さまよっていく。

アラスカに降り立った二人の刑事。
一人は主人公となる刑事はアル・パチーノ。
アルは名刑事として数々の事件を解決してきた。
もう一人は片腕となる部下。
彼は司法取引に応じ
内部調査を受けようとしていた。
アルは部下の内部調査によって
アルの過去の証拠ねつ造が
明るみに出ることを恐れていた。


アルたちがアラスカを訪れたのは
少女殺しを調べるため。
そして、犯人を追いつめる最中
アルは霧の中で
片腕となる部下を撃って死なせてしまう。
故意なのか、偶然か。

少女殺しの犯人ロビン・ウィリアムスが
アルに接触し、この部下殺しで
アルにゆすりをかけていく。

映画はアルとロビンのぶつかり合いを
メインに展開していく。
二人の緊迫した心理戦が見もの。
少女殺しと部下殺し。
この2つの死を巡りながら
アルの葛藤が描かれていく。
眠れないアル。
今は現実か、幻想か。
そんなアルの気分が
白夜のアラスカを舞台に
色の少ない世界に展開する。

アルは悪か、善か。
2つの殺人事件は
どうなっていくのか。

こうした奇妙な緊張感に
切り込むのが
若い女性警官ヒラリー・スワンクだ。
ヒラリーは正しいことを追求する
意志の強さをもっっている。
そして、アルが部下を撃ったことを
突きとめていく。

ラスト。
ヒラリーはロビンの別荘に呼ばれ
アルもそこに駆けつける。

ヒラリーはアルの正義を信じ
部下狙撃の証拠を捨てようとする。
しかし、アルは止める。
その時の言葉が秀逸だ。
「止めろ。位置を見失う」

アルは正義のために
証拠ねつ造を行ってしまった
自らの生きざまを吐露するように
その言葉をつぶやくのだった。

善とは何か。悪とは何か。
老いとは何か。若さと何か。
2つがぶつかり合う
サスペンスという名の
幻想の物語だ。


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プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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