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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2014年10月

アヒルと鴨のコインロッカー

すべてが帰結していく切なさ。

ピカピカに光る黒のローシューズを履く女がいる。
本題には関係がない。
この文章を書いている居酒屋の光景だ。
光るモノは心惹かれる。
磨きこんだ心根は美しい。

井坂幸太郎の小説が原作。
井坂は見事な伏線を引く。
そして、美しく回収する。
美意識。あるかなきかの切なさ。
そのさじ加減が絶妙だ。

この映画はそのさじ加減を少しウェットに再現した。
生身の俳優が演じる情こそが見所だ。

仙台の大学に受かり、
アパートに引っ越した青年が浜田岳。
何でも受け入れる青年を演じながら、
次第に主導権を取っていく演技は秀逸だ。

物語は浜田岳が、隣の部屋に住む
瑛太演じる怪しい男に
書店襲撃を持ちかけられるところから始まる。

広辞苑。
ネパール人。
子犬。
ボブ・ディランの『風に吹かれて』。
ペットショップの女店主。

すべての謎がひとつになっていく後半は
美しく、切ない。

何かを言いたいようで、何も言いたくない。
この気分はまさに井坂幸太郎ワールドだ。

瑛太がいい。
松田龍平がいい。
ラストで駅構内に響く
『風に吹かれて』がいい。
すべてを語っている。
改めてディランを聴きたくなった。


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(2008/01/25)
濱田岳、瑛太 他

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わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡〈1〉

引き込まれる16世紀のフィレンツェ。
ロレンツォ・デ・メディチに魅了される。


塩野七生ルネサンス文学の最高峰。
このあおり文句もスッと入ってくる読後感。

表題通り、マキアヴェッリが主役の物語だ。
マキアヴェッリと言えば、
『君主論』くらいしか思い浮かばない。
なぜマキアヴェッリを書いたのか。
どんな人物なのか、と思って読み始めると、
いきなり肩すかしされる。

導入で読書が進まなかったことを告白したい。
いきなり、フィレンツェの市街から
マキアヴェッリが『君主論』を書いた山荘のある村への
道の話から始まる。
しかも、地名を含めて詳細に書かれていく。
イタリアの土地勘もないし、
何でそんな道の話をするのか。
そんなまどろっころしさを感じながら読み進み、
たどり着いた序章のラストは感動的だ。
道の距離は、マキアヴェッリが公職を追放されて
花の都フィレンツェから、田舎に住まざるをえなかった
その心理的距離を表していた。
そして、マキアヴェッリの山荘の庭から
フィレンツェがかすかに見えた。
そのとき、塩野はいつかマキアヴェッリを書こうと思った、
そうしたためる。その一文から物語は始まっていく。

一巻はマキアヴェッリがほとんど登場しない。
当時のフィレンツェを理解するために
メディチ家について書いていく。
中でも、ロレンツォの活躍は
それだけで一篇の映画になりそうだ。
このエピソードに心躍った。
そして、メディチ家の没落、再興。
そこにマキアヴェッリの運命がからんでいく。

塩野は豊富な知識を自らの中で血肉化して
見てきたように、往時の物語を紡いでいく。
語り口はゆったりと、しかし、豊かだ。
そして、塩野が提示する知識や知恵をかみしめながら
読者は次第にフィレンツェの只中にたたずんでいる気分になる。
そうなったら、もうこの世界から出ることはできない。
そんな魔力に満ちた塩野文学だ。
一巻を読み終えて、改めて目次を見ると
その構成の確かさと無駄のなさに気づかされる。

イタリアに住み、イタリアの歴史を愛し
イタリアという国のあり方が
自らの生き様にさえ重なる塩野が紡ぐ物語は
感情を交えない語り口でありながら
あふれんばかりの情熱を感じてしまう。


わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡〈1〉 (新潮文庫)わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡〈1〉 (新潮文庫)
(2010/04/24)
塩野 七生

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[ 2014/10/20 10:54 ] | TB(0) | CM(0)

風俗行ったら人生変わったwww

ポスト電車男と称賛する底の浅さ。


最初に言う。
タイトルと佐々木希が風俗嬢という情報しかなかった。
で、観た。

えっ。
風俗行ったら という映画と
人生変わった という映画に
前後分かれた感じ。

結論。
風俗という言葉で煽るなよ。
それはそれとして。

物語として浅い。
電車男は車内の暴力行為に対して戦った男が
女性の愛を得る物語だったと記憶している。

この物語は風俗女性の問題と戦う物語である。

しかし。
風俗女性が庇護される女性として、圧倒的に描かれている。
そうなの?
風俗にいる女性はそれぞれに事情があるんだろうけれど。
庇護される存在として、
弱者として描かれるほどに
弱くはない。
むしろ、逞しい。
何だかネットの安易なヒロイズムと
男根主義が見えた映画だった。

佐々木希の役柄は
もっと逞しい女性として
存在して欲しかった。
実際、そうだよね。

弱者からヒーローへと言う物語は嫌いじゃないけど。
この映画は底が浅い。


風俗行ったら人生変わったwww [DVD]風俗行ったら人生変わったwww [DVD]
(2014/04/02)
満島真之介、佐々木希 他

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何もかも憂鬱な夜に

孤独の深度。

孤独が好きだ。
孤独を描いた小説が好きだ。
孤独は寂しすぎるので、酒が友となる。
本がかたわらとなる。

そのとき、孤独の深度が重要だ。
自分に合う深度。

中村文則は孤独を描く作家だ。
物語を貫く強靭な孤独。
その深度が深すぎると感じながらも、心惹かれてきた。

この本は一読すると強靭さが薄いように感じる。
主人公の刑務所の刑務官は壊れそうで壊れない。

その周辺で自殺した親友がいる。
死刑囚がいる。
彼らに対して、主人公はモラトリアムにさえ感じる。
その意味は?
一人の強靭な孤独を追体験する物語と
趣が異なる本書に戸惑いを覚えた。
それは生きるということの殺伐さを表しているが。
でも、ともに生きようというメッセージを受け取った。


何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)
(2012/02/17)
中村 文則

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[ 2014/10/03 10:39 ] | TB(0) | CM(0)
プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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