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本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

ホーム > アーカイブ - 2018年03月

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅/デヴィッド・イェーツ✓

魔法動物使い、アメリカへ。
J・K・ローリングの新たな旅立ち。

J・K・ローリングの新たな物語は
英国からアメリカに舞台を移し
魔法動物使いを主人公に据えた
ニュータイプへ変化した。

J・K・ローリングの物語の構造は
古代から世界史を貫く二元論を色濃く描いている。
悪と善、西洋と非西洋、そして、男と女。

歴史的に世界の宗教を見ても、
二元論が一般的で
キリスト教に見る一言論は例外的だ。

ハリー・ポッターのクラシカルさを残しつつ
アメリカの近代的な感覚を加味して
新たな物語の地平が生まれた。

主人公が持つトランクの中に広がる
魔法動物の圧倒的な世界に飛び込んだ映像は
ファンタジックで大いに魅力的だ。

そして、ゆっくりと始まり
物語は大きな騒動へと発展していく。

アメリカ、しかも、ニューヨークを舞台にして
この破壊と再生の物語が描かれたことに
深い意味を感じる。

ラストで怪物に破壊された街やビルを
魔法使いたちが修復していく様に
911復興への希求を感じたのは
僕だけだろうか。

そして、日本人としては
311への思いも重なる。
涙を禁じえなかった。

魔法使いだけでなく
人間も仲間として活躍したのも
この物語の新しさだろう。
太っちょの彼が
次第にカッコよく見えてきて
ちょっとしたラブストーリーも生まれ
ラストに記憶を失うシーンでは
またまた涙が出た。

ハリーの可愛さから成長を遂げた
新世代の魔法使いストーリー。

このエンターティメントは
自然=魔法動物という
人間が古代から畏怖・敬愛してきた
隣人に支えられて
現代社会の抱える大きなきしみと
その解決への道標を
希望を込めて
描き出そうとしている。
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あん/河瀬直美✓

「私たちはこの世を見るために、
聴くために、生まれてきた。
この世はただそれだけを望んでいた。
だとすれば、何かになれなくても、
私たちには生きる意味があるのよ」

樹木希林が語ったこの言葉がすべてを言い表している。
小さなどら焼き屋。
店長である永瀬正敏に
樹木希林はバイトで使ってもらえないかと申し出る。
この稀有な出会いから、物語は始まる。

あんを作る達人の樹木。
永瀬とあんを作るシーンは興味深い。
このシーンに
すべての思いが
込められている気がしてならない。

そして、樹木はハンセン病であることを知られる。
世間の声、そして……。

1996年までハンセン病は隔離政策がとられ
差別の助長となっていた。

映画に出てくる浅田美代子の声は
世間の差別の象徴だ。
自らの心に問いかける。

樹木はどら焼き屋での時間を
のちに楽しかったと振り返る。
この言葉の深さ。
何かになることを拒まれた人たちが
しかし、生きる意味がある、
というところにたどり着く。
この思いには言葉がない。

完全なるチェックメイト/エドワード・ズウイック✓

伝記映画の難しさ。

ソ連の世界チャンピオンに勝った
アメリカの早熟なるチェスの天才。
というキャッチ―な人物が主人公。

戦いの中で神経をすり減らし
その言動も風変りだったという事実が
描かれていく。

時はベトナム戦争の最中。
負けが込み始めたアメリカには
勝ちが必要だった。

そこでチェスによる
ソ連との代理戦争が
クローズアップされた。

こうした事実の中
トビー・マグワイアは
神経症的主人公を熱演する。

映画の観客も
主人公のソ連チャンピオンとの戦いに
勝利を望んでしまうが
そこが主人公のエキセントリックな姿に
どうしてもスポイルされてしまう。

ドラマチックにしない演出はわかるのだが
それであれば、もっと奇妙で、
だからこそ、もっと魅力的に
主人公を描いてほしかった。

神経症的な側面は誰にでもある。
それが極度に頭脳を使う
チェスプレイヤーであれば
なおさらだ。

その葛藤をもっと尊敬をもって
描いてほしかった。

単なるチェスの上手い変わり者。
そんなテイストがどこかに感じられて
残念だった。

伝記映画では
実はこんな人でした的な描き方が多いが
そこに主人公に対する人間愛があってほしい。
でないと観る側が共感できない。

6才のボクが、大人になるまで。/リチャード・リンクレイター✓

手法が取りざたされるが……
今という瞬間を積み重ねていくことは
人生に似ている。

シングルマザーと
息子、娘、離婚した元旦那。
この4人を同じ俳優で
12年間撮り続けた映画。

毎年、夏に撮影を行い、
12年間の時を経て
6歳の少年は18歳の青年になる。

先の見えない瞬間を
積み重ねていく様は
人生に似て。

シングルマザーで
結婚、離婚を重ねる母の
すったもんだの人生も
ラストの嘆きに行きつく。

瞬間は永遠。
永遠は瞬間。
ただ、そう思えない日々を
僕たちは重ねていく。

海街dialy/是枝裕和✓

死に彩られた
私たちの日々の物語。

鎌倉で暮らす3姉妹の元に
家を出ていった父の訃報。
田舎の温泉町で出会ったのは
腹違いの妹だった。

美しい自然の風景や
日々を描きながら、
そこに色濃く見えるのは死。
桜、花火、紅葉
これらの美しさも
散りゆく
移ろいゆく姿。

父の死で始まり、
祖母の法事、
親しかった
食堂のおばちゃんの葬儀と
死は日常にまとわりつく。

その中で
綾瀬はるか
長澤まさみ
夏帆
広瀬すずの
4姉妹は
さまざまな思いを
抱えながら
日々を生きてゆく。

梅酒作り
障子貼り
料理
花火見物
お墓参り……
鎌倉の古家で
古風に感じられる日々には
懐かしささえ覚える。
日本の庶民の
伝統を受け継ぐ
文化を感じる。

死に彩られた日々。
悩みを抱えながらも
きらめく広瀬すずの生命感は、
命が死に抗うために
私たちが受け継ぎ続ける
血の繋がりを象徴しているように
感じられた。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/アレハンドロ・G・イリャリトゥ✓

落ちぶれた俳優の挑戦
あるいはスーパーヒーローの
カーテンコール。


冒頭からワンショットのカメラワーク、
ときおり主人公が見せる超能力に引き込まれる。

現実か? 妄想か?
リアルか? 夢か?

そして、次第に主人公が大金をつぎ込んで
挑む演劇の成否が気になってくる。

批評家との前夜の争いで
舞台初日の評価は
ますます危機的状況に。

追い詰められた俳優が見せる
予期せぬ奇跡とは?

奇妙な味わいの作品。
作家性が強い。
中南米の文学にも似て。

アンナチュラル/塚原あゆ子・竹村謙太郎・村尾嘉昭✓

人生の闇と光を明らかにし
未来を照らす。
それが法医解剖医。


石原さとみ
井浦新
窪田正孝
市川実日子
松重豊
UDIラボの面々が不審死の謎を暴く。

それぞれに抱える過去とトラウマ。
井浦が追う恋人の死と赤い金魚。
窪田の裏切り。
これらをラストへ疾駆する
伏線としながら、
毎回社会問題を背景とした
リアルなドラマが描かれる。

第1回、 院内感染
第2回、 自殺サイト
第3回、 ブロガー殺人、社会と女性蔑視
第4回、 サービス残業
第5回、 殺人と復讐
第6回、 合コン殺人
第7回、 遠隔死亡診断、いじめ
第8回、 雑居ビル火災
第9回、 連続殺人
第10回、連続殺人

個人的には第8回の
雑居ビル火災死者に
秘められた光に涙した。

第5回で井浦が復讐を促す
展開が衝撃的で
物語のフェイズを一気に高め
緊張感が加速した。

脚本家・野木亜紀子への
注目が高まっている。

次はそれぞれのテーマを
じっくり掘り下げたドラマが観たい。

予告犯/中村義洋✓

ミステリーのためのミステリーに
未来はあるか?

ミステリーはトリックありき。
しかし、そこに思想や哲学がないと
膨大な時間と才能を注ぎ込んで
一回限りの消費作品になってしまう。

この映画はシンブンシという
ネット型犯罪者を巡る物語だ。
彼はネットの動画で予告し
事件を犯す。

首謀者に生田斗真。
追うサイバー犯罪課警部に戸田恵理香。

事件が続いた後、
シンブンシである
生田斗真の事前談が描かれる。
仲間として登場してくる4人。
生田を含めた5人の出会いと事件が語られる。
そして、4人は予告犯となっていく。

ラストのどんでん返し。
筋は通っている。

これは理系の理知的な計画的な犯罪だ。

しかし、そこにもう一度観たくなる
深いドラマはあるか。
熱い人間ドラマはあるか。

ただ、消費される物語がある。
それは現代的、極めて現代的ではある。

今こそ、作者の全人格的深さが問われる時代なのかもしれない。

いつか晴れた日に/アン・リー✓

大きな事件はないが、
観始めたら目が離せなくなった。


J.オースティンは恋愛小説の名手。
18〜19世紀のイギリスに住む女性が
結婚するまでを描く作家。
大きな事件はないが、
ページをめくる手が止まらない、
と言われる。
映画もそのDNAの色濃く
観始めたら止まらない。

19世紀イギリスの田舎に住む姉妹の
結婚までを描いている。

感情のおもむくまま、恋に一直線な妹。
気持ちを抑え、静かにたたずむ姉。
それぞれに思う人が現れるが、
ともに突然いなくなる。
そして……
ラストのハッピーエンドに
幸せな気持ちになる。

君の名は。/新海 誠✓

運命の人がいると思うか。
いて欲しいと思うか。

君の名は。
ようやく見た。

僕は共感した。

物語は
『転校生』の入れ替わり系から
突如、世界系に。
そして、ラストは余韻を残した
ハッピーエンド。

主人公は田舎に住む高校生、三葉。
彼女は巫女の系譜。
組み紐を編み、
口含み酒を醸し、
奉納の舞を踊る。

もう一人の主人公は東京に住む
3歳年下の高校生、龍。

二人が不定期に入れ替わる。
そして、突如の暗転。
ステージが変わる。

時空を超えた二人が
黄昏時につかの間出会うシーンは美しい。

黄昏は、誰そ彼が語源と説明がある。
万葉集の
「誰そ彼(たそかれ)と
われをな問いそ 九月(ながつき)の
露に濡れつつ 君待つ我そ」
という和歌から来ている。

また、魔物と出会う
逢魔が時でもある。

夕暮れは不思議の時間。
だからこそ、二人は時空を超えて
出会えたのである。

境界領域、辺境。
トリックスターが活躍する時間。

この設定は腑に落ちる。

そして。
時は過ぎ。
成長した二人は出会う。

お互いの名前すらも
忘れてしまった二人は
しかし、運命の人だと
ともに直感し。
お互いに問う。

「君の名は。」

かつての名作メロドラマの
タイトルを冠し。

このアニメは時空を超える
あの大震災への思いも込めた
現代のメロドラマになった。

この映画に共感できるのは
運命の人がいる、いて欲しい、希求する
感性の人なのである。
プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
できない日はごめんなさい。

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