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今こそアーレントを読み直す

8月6日分。
ハンナ・アーレントはドイツ出身、アメリカ合衆国の政治哲学者・思想家。
ドイツ系ユダヤ人。1906年~1975年。
ナチスによるユダヤ人迫害を逃れるため、
フランスを経由してアメリカに亡命した。

この本はアーレントの現代的な意味を読み解いている。
アーレントが政治学者として注目されるきっかけとなったのは
『全体主義の起源』という著作。
「全体主義」を、西欧近代が潜在的に抱えてきた
矛盾の現われとして理解しようとする。

「全体主義」は全近代的な野蛮の現われではなくて、
大衆民主主義社会に起因する問題だと見た。
しかも、この三巻構成の著作を通して
現状を打開する処方箋を示そうとはしていない。
ここが「あえて」だと思えるかどうかが
アーレントのファンになれるかどうかの分岐点であると著者はいう。

全体主義発生の過程は
「反ユダヤ主義によって全体主義のための物語的な素材が用意され、
 国民国家の生成と帝国主義によって大衆社会が醸成され、
 その経済的・社会的存立基盤が大きく変動し、大衆が動揺し始めた時、
 そうした大衆の不安を物語的に利用する世界観政党・運動体が出てきた」
と著者はまとめる。

ここが白眉であるが
「肝心なのは、各人が自分なりの世界観を
 持ってしまうのは不可避であることを自覚したうえで、
 それが『現実』に対する唯一の説明ではないことを認めることである」
とする部分だ。

誰でも自分の考え方や思想が正しいと
無意識のうちにフィルターがかかっていく。
それは右も左もない。
その危険性を常に意識することが大切だ!
というのがこの著書の勘所だと感じた。

そして、このことは「党派性」への危機感へとつながっていく。
群れをなすととかくその「党派」内の物語に左右されがちだ。

また、ナチスの悪の象徴的なアイヒマンの裁判を傍聴して
アーレントはこう分析したと著者はいう。
「平凡な生活を送る市民が平凡であるがゆえに、
 無思想的に巨大な悪を実行することができる」

さらに
「『社会的領域』において阻害が進行し、
 人間らしさが失われていくにつれ、
 人々は『親密圏』の中に、
 “人間”らしい魂の繋がりのようなものを
 求める傾向を強めていく」とアーレントは指摘するという。
そこにのめり込んでしまって、公的活動を放棄する危険性を語っている。

アーレントは
「未来」志向の「意志」と対比する形で
「判断」を「過去」志向の精神の作用として性格付けている。
そして、「判断力」は、「過去」と「現在」と「未来」を、
そして個人の「精神の生活」と「活動的生活」を結ぶ、
極めて重要な能力だと、著者はラスト近くで位置付ける。
 
まとめとして
「彼女の『政治』哲学からすれば、
右であれ左であれ、『人間の自然な本性』を一義的に定義し、
人民を最終的な『解放』へと導こうとするような思潮は、
『複数性』を破壊し、全体主義への道を開くものに他ならない」

今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)
(2009/05/19)
仲正 昌樹

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[ 2010/12/09 18:26 ] | TB(0) | CM(0)
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