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白仏

白仏とは何か。
生涯を通して人は何を追い求めるのか。
人生の意味を
自ら問い直さずにいられない
フェミナ賞外国文学賞受賞作。


主人公は九州の鉄砲屋江口稔。
彼の戦前戦後を通した生涯の物語だ。
筑後川下流の島に生まれた彼の
少年期、青年期、老年期が綴られる。
そこを貫くのは死、そして原始的なエロス。
日本の小説の伝統作法の流れを汲み
さらに寓話へと昇華させた。

少年期、敵対する村の少女に
小便をかけるシーンは
原初的な性のカオスにあふれる。

近くに住む奔放な年上の少女への憧れと興奮。

上の兄の川での水死。
それが一家にもたらすある種の死の匂い。

シベリアでのロシア兵との一対一の殺し合い。
そこから生まれる殺人への痛み。

鉄砲屋としての成功と衰退。

否応なく物語を覆う戦争と敗戦。

そして、稔の夢に出続けていた
白仏への情熱。

島のすべての墓をあばき
その骨で仏像を作ろうとする
狂気にも似た思いと行動。

そして、物語は冒頭の死の床へと回帰していく。

アジア的エロスと死をないまぜにして
稔の物語は風俗や流行を超えた
本質的な物語になった。

興味をもって読み進められ
心にコツンコツンと当たり続ける
石つぶてはやがて読む者を変えていく。

死は平凡なテーマだ。
言葉を変えれば根源的な題材だ。
人が生きることは究極的に死との対比だ。
死への助走だ。
だから、死はすべての物語の起点であり終着点であり
支点であり力点である。
死は人生のすべてをつかさどる。
死とどう対峙するのか。
それが文学や哲学の本質的なテーマでもある。
というような意味で、死は平凡なテーマだ。
しかし。この物語は非凡だ。
それは“眼球”という言葉に代表される
作者の並々ならぬ物語再生への思いであり
そして、やはり白仏の存在感だ。
墓の骨を集めて仏を作る。
それによってすべての人は一体となる。
その思いはやはり偶像としても
寓話としても、事実としても
人の心を捉えて離さないシンボルとしての
パワーにあふれる。


白仏 (文春文庫)白仏 (文春文庫)
(2000/08)
辻 仁成

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[ 2011/08/30 10:00 ] | TB(0) | CM(0)
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ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
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