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ダイナー 本と映画とDVDはこれを見よ!

ほぼ1日1作品をめざしてレビュー!

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ダイナー

ウェイトレスをする。
それだけで大いなる冒険だ。


〇このハードボイルドは
 現代日本の本質を暴きだす!

現代の私たちは
資本主義というメスに
細部まで切り刻まれている。

全霊をかけて行う崇高な行為であったはずの「労働」は
単なるお金稼ぎと、自らの順位競争に落ちた。
非正規雇用やアルバイト、失業者たちは
人間的価値までも切り刻まれ、部品と化している。

五体は、体と心に分け隔てられ
きしみを生じている。

いのちはそこにあり、ここにある。
あふれかえっている。
しかし、人間は分類され、振り分けられ
商品化され、その輝きを押さえつけられている。

そんな現代。
このエンターティエントは
死ぎりぎりの極限状況に
主人公を置くことで
全人格的な人間の復活を
逆説的に描いている。

まさに資本主義社会が
高度に行き着いた
どん詰まりの日本だからこそ
生まれた骨太のハードボイルドだ。

ヒロインはカナコ。
彼女はヤバい仕事に巻き込まれ
その結果、殺し屋だけが集う
食堂のウェイトレスにされる。
気に入られても殺される。
気に入られなくても殺される。
極限状況の店だ。

カナコはこの店で
次第に輝きを見せ始める。
文字通り、命を賭けた仕事。
それはもう金稼ぎや順位競争などではなく
頭脳と身体と心が一体となった
今日を生きるための全人格的な働きなのだ。

どこにでもいる平凡なカナコが
次第に変わっていく。
輝きを見せてくる。
読んでいるこちらも
どんどん愛おしくなってくる。

そして最後には
カナコが生き延びることを
心から望んでいる。

それが第一の読みどころだ。


〇設定だけで
 既にあまたの小説を凌駕している!

殺し屋だけが集うダイナー。
この設定だけで
あまたの小説を凌駕している。
この設定に導かれるように
描かれる言葉が太い。
料理の描写がよだれを誘う。
その次の瞬間に身体を刻まれる
リアルな死の恐怖が襲いかかる。

全人生をかけて料理を作り、酒を振る舞う。
それを命をかけて食べる。
ときには己の心のままに戦う。
狭いダイナーという空間だけで
この物語世界は神話の輝きを魅せる。

それが第二の読みどころだ。


〇ボンベロの背中を愛せ!

この物語は
ヒロインのカナコ以外に
たくさんの魅力的な
キャラクターが登場する。

なかでももう一人の主人公である
ダイナーのシェフ・ボンベロの存在は
他を押しのけて圧倒的だ。
でかい背中。
元殺し屋。
そして、超一級の腕をもつシェフ。
血の臭いがするシェフ。
何とも危険ではないか。
その手から繰り出される
旨いバーガーには
舌舐めずりが尽きない。
圧倒的な暴力と強さに
ぐうの音も出ない。
そんなボンベロが
次第に追い詰められていく。
ますます男が輝く。

それが第三の読みどころだ。


日本はいびつになっている。
歪んでいる。壊れかけている。
そんな社会で生きざるを得ない我々は
このダイナー主人公たち
そのものなのだということを、
危機的状況に立ち向かう全人格的人間が
今こそ必要なのだということを
この物語はエンターティメントを超えて
突きつけてきた。


ダイナー (ポプラ文庫)ダイナー (ポプラ文庫)
(2012/10/05)
平山 夢明

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[ 2012/12/05 09:42 ] | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
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