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殺人鬼フジコの衝動 本と映像はこれを見よ!

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殺人鬼フジコの衝動

殺人女の話なのに
読むのを止められない。


〇何なんだ、この疾走感。

以前から気になっていたこの本。
軽い気持ちで読み始めたら
止まらなくなった。
久々の経験。
お話は少なくとも15人の男女を殺した
殺人鬼フジコの生涯を
幼少期からたどっていく。
一人称と三人称が交錯しながら
フジコの内面に踏み込んでいく。

冒頭、小学5年生のフジコが
過酷にいじめられる話から始まる。
周囲の人間がめまぐるしく登場し
フジコは一家惨殺の生き残りとなる。
そして叔母の家に引き取られていく。
そこで新たなグループへの所属と
いじめがまた起こる。
そして…

一転中学校の卒業式。
卒業生代表で答辞を読むフジコ。
優等生になっていたフジコ。

さらに結婚。
新たな仕事へ。

めまぐるしくフジコの環境は変わっていく。
そしてフジコの内面も変化する。
その展開の速さに読むのが止められない。


〇どこか共感する自分。

フジコの境遇は
裕福でないし
いじめにもあう。
そんな中で生きていこうと
変貌していくフジコ。
どこか共感する自分がいる。

小学生からの追体験を経て
僕はフジコと同化していく部分がある。
これは読む者の心まで殺すミステリー。

過酷な人生をしたたかに生きる。
そして、心が動くと文章も揺れていく。
心の揺れがピークになると
文章は途絶える。
このリズムにやられていく。


〇背筋がゾクゾクするラスト。

このミステリーが優れているのは
本文でフジコの生涯を描きながら
はしがきとあとがき、最後に添えられた小さな記事で
さらに多層構造の仕掛けを行っているとことろだ。

この小説は別の女性が書いたものを
ある小説家が上梓したとされている。
そして、あとがきでその小説家と女性の
関係が明らかにされる。
さらに記事へと続く。

このわずかな文章が新たなミステリーとなる。
その真意に触れたとき
背筋がゾクゾクするのを止められない。

嫌な感じがありながら
読み続けてしまう
恐ろしい本だ。


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(2012/03/24)
真梨幸子

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[ 2012/12/10 10:06 ] | TB(0) | CM(0)
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Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
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