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ハーモニー

究極の平和な世界とは何か。


〇絶対的平和=ハーモニーとは

伊藤計劃氏のオリジナル長編第2作。
伊藤計劃は何を考えていたのか。
そこを知りたくて書を読む。
虐殺器官の衝撃から続く
第2作は究極の平和を追求した。

天才(とあえて言うが)SF作家であり
若くして逝った彼を思うと
心が痛くなる。
彼の病室での思索の結晶が
この本である。

物語は人々が体内にWatchMeを入れて
健康であり続ける近未来が舞台。

伊藤は主人公に3人のヒロインを置いた。
カリスマの輝きをもつミァハ。
語り手の私トァン。
3人のバランスを取っていたキアン。

子どものころに健康的な社会に反抗し
自殺を図り、失敗。
大人になり再び出会うところから
物語は動き出す。


〇社会と個の対立。

ここで描かれているのは
古典的テーマでもある
社会と個の対立だ。

人々を包み込み、健康を見守る社会。
健康であることを求める社会。
どこか日本の今が投影されている近未来。

伊藤は現代の技術から未来を俯瞰して思考した。

包み込む社会によって
孤独は喪失されるものか、否か。

印象的なフレーズがある。

ミァハが語る。
「持久力という点では本がいちばん頑丈よ」
「孤独の持久力」

財布と貯金箱の比喩も意味深い。
「財布が使いこなせれば、貯金箱はいらないはずなのにね」

欲望と意志。

意志は、実はつぎはぎのものだ。
短期的欲求と長期的欲求が葛藤して
生まれているのが、意志なのだ。

こうした思索をヒロインたちは重ねる。
それは病床での伊藤の思索と思えてくる。

そして、強権的優しさの社会が包み込もうとしていく。

生物としての人間にかろうじて宿った意志。
その意志が物語の後半で大きくクローズアップされていく。
意志をもつことが幸せなのか。
意志があるから不幸ではないのか。

物語は、強権的な優しさをもつ世界に
刃を突き付けたミァハに
螺旋監察官となったわたし=トァンが挑む形となっていく。


〇少女の物語。

今なぜ少女の物語なのか。
それはアニメにも散見する。
現代という鋭利な刃物に
研ぎ澄まされた少女こそが、
ある種の抑圧の中でヒロイン性を体現するからか。


〇一人称と三人称の対立。

そして。
伊藤は一人称へこだわる。
この物語も一人称で展開する。
実は、このことがこの物語の大きな仕掛けを生んだ。
それは読んでのお楽しみということになる。


一見静かな思索の物語。
平和な世界に突如事件は起こり
世界を巻き込んでいく。
その中心にかつての少女たちがいる。
これ以上にドラマチックな
“意志”についての物語はないだろう。


ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
(2010/12/08)
伊藤 計劃

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[ 2013/01/16 10:12 ] | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ミツ

Author:ミツ
神奈川県在住の
フリーランスコピーライター。
本と映画を中心に
1日1レビューをめざします。
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